1月3日  瞳の日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 さて、早速だが本日2017年1月3日は『瞳の日』である。

 賢しい諸君らはもうお気づきだろうが、その由来は1と3.つまりはひと。ただの語呂合わせで作られた記念日である。

 さらに賢しい諸君らにはすでに言うまでもないだろうが、この記念日を制定した犯人は眼鏡やコンタクトレンズを扱う業界そのものである。

 今日と言う日に瞳の日と名付けた所で、はっきりいって売り上げが伸びるとは到底思えないが、瞳の日なだけに名付けた彼ら、先人達の涙ぐましい経営努力が伝わってくるではないか。


 それだけではない。

 私は、メガネやコンタクトレンズを扱う企業らがこの瞳の日を制定した事に感激した。

 だってそうだろう?

 物を売りたいなら眼鏡の日や、コンタクトレンズの日と名付けるべきだった。だが彼らは、今日と言う日を瞳の日と名付けたのである。今一度考えてほしい。彼らの顧客は目が悪くなくてはならない。当然である。なぜなら十分な視力を持つ者は眼鏡もコンタクトレンズも必要としないからだ。

 しかし、彼らは名付けた。

 今日と言う日を。


――瞳の日と。


 パソコンやスマホが普及した現代に、酷使され疲れ切った瞳を労わる記念日を制定したのだ。随分と泣ける話ではないか。瞳の日なだけに。 




 今日は瞳の日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る