等身大の精神が挑む、遠く儚い空中戦。

シリアスで硬派な戦闘を求める方におすすめの作品です。
本作は、異能を得た人類が正体不明の脅威に立ち向かう、構造としては王道を行くバトル物ですが、特筆すべきはその徹底した雰囲気の統一と、全体に漂う物悲しさだと思います。

同じように日常を送る人々が暮らす現代ではありながらもどこか違う皇紀2677年の東京、立ち並ぶ廃墟のビルと合間に立ち並ぶ青ランプなど、失われてしまったどこかの時代を想起させるような用語と風景描写。
破壊の限りを尽くす災害でありながら、「飛んでいる間しか存在できない」、どこか哀れな存在でもある飛獣。

そうした影の濃い世界に暮らす主人公、真鍋マグの心理描写も深く、無敵の力で圧倒するのではない、どこにでもいる少年のどこにでもいる精神が、理不尽な脅威に必死に抗う尊さがある作品です。
特に『あつまれ仲間』で描かれた多人数による空中戦描写の緻密さと敵の脅威は圧倒的で、登場人物の心境に感情移入できてしまうからこそ、いつ誰が死んでもおかしくない、戦闘の緊張感と過酷さが、真に迫る形で心に響きます。

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