第26話 水 稽古

 「りょうま りょうま 早うしいや」

乙女と龍馬が、風呂場で遊んでいる。

どうやら、桶に顔を漬ける稽古を乙女が龍馬に、させているようだ。


 桶の水を睨んだまま、動こうとしない龍馬を

乙女が、けしかけている。


「早う、つけや、なんちゃあ、こわあないぜ」


思い切って顔を漬けた龍馬、すぐに顔を上げる。


「いかん、いかん 水に顔を、つばけないかん。

 すんぐに顔を上げたら、稽古にならんぜ」

「・・・・・」

「りょうま はい、もういっぺんやってみいや」

「・・・・・・」

泣きそうな顔をして龍馬が俯いている。


「あてが、やっちゃるき、見よりよ」

乙女が、桶にザブッと顔をつけてじっとしている。


やがて、ブクブクと泡を吹いて

息を吐き出している。

ザブッと顔を上げた乙女が龍馬に

「これが出来んと、鏡川で泳げんきね りょうま

 よう、おぼえちょきよ」

「・・・・・」

憮然とした表情で、龍馬は、風呂場を出てしまった。

龍馬は、どうも水が、苦手である。

鼻や目に入って来る水が、何やら敵のようである。

姉の乙女が、何やら怖い・・・。



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