第13話 教育

 真ははお湯を沸かして、春の体をたらいで洗ってやった

春は喜んでくすくす笑い続けた

 洗った後はびっくりするほど綺麗になった

肌がまっさらになり、伸びすぎた髪も切ってやった

 着物も洗ったが、あまりに粗末なので真は夜中に干しっぱなしの

洗濯物や開けっ放しの家から着物を盗んだ

 よほど、気持ちがよかったようで、ありがとうと真の首に

腕を巻き付けて何度も言った。

 それから、これが習慣になった

真は疲れていたが、自分も嬉しくなって綺麗になった春が眠ったあと

ずっと眺めていた。

 眺めすぎて自分の体と見分けがつかなくなるような錯覚に陥った

誰も知らない地下で、二つの命は完全に共鳴し重なった。


 それから、意外なことに春は寺小屋に行っていたことがあると言った。

養母は見栄だと言ったがそれだけは良かったと言った

真は字は読めない、今までそれを恥ずかしいと思ったことなどなかった。


 春は本が読みたいと言った。

字を書く道具が欲しいと言った

 真は少ない給料からそれを買った。

春が自分の名前を書いた

「さな」春は真に本を読んだ

 何度も何度も大切に同じ本を読んで過ごした

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