PART:3
ザウルブラックの前にはカゲブラックが立ちはだかる。
「あんたを怪我させたくない。悪いが見逃してくれ」
「そうはいかねえ。これも戦隊の仕事なんだよ」
カゲブラックの忍者刀を躱しながらパキケファロヘッダーをはめた両腕でジャブを当てつつ反撃するチャンスを伺うザウルブラックだったが、カゲブラックは刀首でザウルブラックの腹に重い一撃をぶつける。ザウルブラックがうめいてよろめくと、その隙を見逃さず回し蹴りが飛んできた。
走り回りながら武器と魔法で周囲を攻撃するバーチャルピンクとハイドランジャーの前にはキャンディとウォーターリリーが現れる。
バーチャルピンクは威嚇射撃として専用武器のピンクスナイパーを発射し、ハイドランジャーは「水流を発生させる魔法」を発動するが、キャンディはその名の通り棒付きキャンディ型のステッキで弾き飛ばし、ウォーターリリーは魔法で打ち消した。
「それ本物の銃なの?凄いねー」
「投降してください。戦いは避けたいんです」
「あんたもさっきまで魔法を使ってたじゃない!」
そういうとバーチャルピンクはピンクスナイパーのレベルを上げ、ハイドランジャーはウォーターリリーを吹っ飛ばした。
レッドソードとザウルイエローがアルストロメリアとグラビレッドと一歩も引かない戦いを繰り広げる横で、ドリームホワイトとザウレッドはレッドバットとブラックバットの攻撃から逃げ回っていた。
「もうあきらめろドリームホワイト。一度しか言わんぞ」
光線銃バットシューターの攻撃をザウレッドがランスモードへと変えたティラノアームズで弾き飛ばし、むかって来たブラックバットにはソードモードで対応する。
「お前のしたい事は何だ小僧。こんな騒ぎを起こして何か意味があるとでも思ってるのか?」
「強大な敵がいるのにそれを無視して二つに分かれてぶつかるのが意味のある事とは思えないだけです」
「それは今のお前も同じじゃないのか?ドリームホワイト支持派と否定派で今争ってるじゃないか」
「そういう意味じゃない!登録法の賛否とシビュレンジャー、どちらを天秤にかけるかって事です!」
ザウレッドは根気でブラックバットを押し返し、刃を振り下ろすがブラックバットはバック転でかわしていく。そのまま背を向けて走り始めたかと思ったら壁を蹴ってターンし、蹴りで剣の軌道を逸らした。さらにはイエローバット、ブルーバット、ピンクバットも合流し、バットシューターでワイヤーを射出し動きを封じた。
「殺しはしないが、少し痛めつけさせてもらうぞ」
にじり寄ってくるバットレンジャー達。しかしそこに無数の桜の花びらが舞い散り、バットレンジャーを吹き飛ばした。
「修ちゃん大丈夫?」
「お前もうちょっと速く来てもいいんだぜ?」
チェリーブロッサムだった。ザウレッドは彼女の横に並び立つと相手にできた隙を見逃さず、チェリーブロッサムの起こした風の魔法に乗って突進し、ブラックバットを切りつけた。
オキザリスが召喚した巨大な剣がジオブルーに向かって振り下ろされる。その刃にアイビーの魔法で召喚した蔦が絡みつき、ギリギリのところでジオブルーには届かず、逆にジオシューターとドルフィンボウで攻撃してきたが、オキザリスの前のグリーンベンジャーがランスで弾き飛ばしていく。
「よ、余計な事すんなよ!」
「だから庇ってやってんすよ。あんた一人じゃ危険だから」
「そりゃこっちの台詞だっての。よっこいせっとお!」
気合の掛け声と共にオキザリスは剣を再び大きく振り上げ直した。蔦をゴスロリ衣装の袖から召喚しているアイビーは釣り上げられた魚のように空中に浮かび上がった。
「うわわわわわ!お、降ろせ!サタンの遣わしき闇の植物を恐れぬというのか!お、降ろして~~!!」
足をバタバタさせるアイビー。ジオブルーはすぐにドルフィンボウを上に向けて蔦を断ち切り、落っこちて来たアイビーに駆け寄り抱きかかえた。
「前からずっと思ってたんすけど、あんた随分とその子に肩入れするっすね。何か理由でもあるんすか?」
「……この子の敵は私の敵。ただそれだけの話……」
「成程、あんた信頼してるんだな」
「……信頼ではなく、愛ゆえによ……」
「へー、そういう系なんだ、でも容赦はしないよ!」
今度は接近戦に持ち込むために剣を通常の大きさに戻し、突撃してった。後ろからはグリーンベンジャーも続く。
「大丈夫?」
「う、うむ。見苦しいところを見せてしまったな……」
「後ろに隠れてて。守るから」
「わ、我にも守らせろ!」
ジオブルーとアイビーもまた魔法と武器で応対した。
イエローガードとホワイトバード、ランタナの攻撃を受けて大ダメージを負っても、ブラックサレナは反撃一つしなかった。ザウルブルーが援護に回るが、それでも棒立ちのまま何もせず、ただひたすら攻撃を受け続けていた。
「ぶ、ブラックサレナさん大丈夫なんですか?」
両手にホーンランサーを持って相手を押さえつけるザウルブルーがブラックサレナの様子を尋ねるが、当の本人は全身にダメージを負いながらも全く気にしている様子が無かった。
「そろそろ、ですか……」
ブラックサレナは両手を胸の前でバツ字に組むと、それを天に向かって掲げた。するとイエローガード、ホワイトバード、ランタナの体から火花が連続でほとばしり、その場に倒れこんだのだった。
「ど、どうなってるんだ?」
「私たちの攻撃が……」
「戻ってきた?……」
体を押さえて驚愕する三人を見下ろしながらブラックサレナは言った。
「私、魔法が一つしか使えなかったんです。受けたダメージを相手にそのまま返す魔法。自分が受けた傷や肉体的・精神的ダメージをそのまま相手に跳ね返す効力があります。人助けには向いてませんが、こういう時には役立ちますね」
驚くザウルブルーを尻目にブラックサレナは踊っているようにその場で回り始めた。
「知ってますか?ブラックサレナの花言葉は、『呪い』なんですよ」
一方のレッドバットとドリームホワイトはバットソードとドリームバットで激しくぶつかり合っていた。
「もう私にはお前が解らない。そんなに現状が気に入らないのか?」
「私からすれば、我らから自由を奪い取る悪法を支持するお前の方が解らない!」
「私は人々から笑顔の絶えない世界を作りたいだけだ!」
「綺麗ごとで世界が救えるものか!」
二人は激しくぶつかり合った。ドリームホワイトがドリームバットでバットソードを跳ね飛ばすと、レッドバットはハイキックでドリームバットを跳ね飛ばした。そこから二人は殴り合いになる。ぶつかった地点にから火花が起こり、スーツが破れマスクにひびが入った。体から血が噴き出すが、両者は止まる気配がない。
レッドバットはドリームホワイトからいったん離れて距離を取ると、腰からバットシューターを引き抜いて発射した。しかしそこにブラックサレナが割って入ってレーザーをその身に受ける。ブラックサレナを吹き飛ばすことは出来たが、後ろから突っ込んできたドリームホワイトの一撃を受けた。
レッドバットの腰に組み付いたドリームホワイトは、大きく投げ飛ばして覆いかぶさると、拳でレッドバットのマスクを殴打し、破壊した。
「しばらく見ないうちに、……強くなったようだなドリームホワイト。どうやら…私の負けのようだ。早く止めを刺せ」
口から血を流しながらレッドバットは言った。その言葉通り、すぐ近くに落ちていたドリームバットを拾い上げ、大きく振り上げた。だがそれはザウレッドとチェリーブロッサムが止めた。
「もういいでしょうドリームホワイト!殺しちゃだめです!」
「……離せ」
「俺達の目的を忘れたんですか?俺達はあなたにシビュレンジャー退治に協力してほしくて脱走させたんですよ!?」
ザウレッドは一旦離れると、大声で叫んだ。
「みんな聞こえてないのか!俺もさっき気づいたが、これを見ろ!」
ザウレッドは映像を写す。その場にいた戦隊と魔法少女は、彼の声に気付いて手を止めた。
その映像は衝撃的なものだった。一つの都市が、空中に浮かんでいるのだった。原因は市の境に設置された巨大物体によるものだった。物体のすぐ近くには、それぞれ一人ずつ、ドレスを着た少女が立っていた。
彼らは一瞬でそれがシビュレンジャーであると理解した。そしてその都市は、修二と友菜が暮らす漣市だった。
それを見た戦隊と魔法少女は戦いの手を止める。ドリームホワイトもまた、バットを降ろした。
「俺たちがこうしている間にも、たくさんの人が困ってるんだ!強大な力によって!これがその証拠だ!!これを見てもまだわからないのか!?俺たちが憧れてたやつらはこんなにわからずやばかりだったのか!!もう俺達だけで止めに行く!」
ザウレッドはそこまで言うと、チェリーブロッサムや合流して来たザウルブラック達、そして倒れているブラックサレナを引き連れ、走り去っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます