PART:2

 「た、大変です!ドリームホワイトとブラックサレナが脱走しました!!」


 クマが血相を変えてシャーベットの執務室に駆けこんできたが、彼女はすでにその報告は受けていた。


 「ああ知っている。あちらこちらで騒ぎになっているようだな」

 「な、何だ知ってたんですか……」

 「先ほどこちらに広報のネズミから連絡があってな。すでに把握済みだ」

 「しかもその脱走をザウレンジャーさんとチェリーブロッサムさんが手引きしたって言うのは?」

 「それも知っている。全く重要参考人を逃がすなんて、何を考えているのやら……」


 そういうとシャーベットは魔法の端末で誰か対策に向かったかを調べ始めた。一番彼らに近いのは……


 「バットレンジャーか。ある意味最も相応しいな」

 「どうします?この対応は」

 「彼らに任せよう。可能な限り無力化し、事情を聴く」




 同じころ、シビュレンジャーは漣市の街外れにある廃棄物置き場に集まっていた。そこに置かれているガラクタを一つ一つ手に取る。大半はもう使い物にならないものだったが、中にはまだ使えそうなものや、新品同然のものまであった。


 「これらの物体、まだ使えるわね」

 「何故廃棄するのかしら?」

 「いくらでもあると思っているから。だから廃棄する。この星の生物のレベルが低い証拠」

 「あるいは自分たちの都合が悪いとさっさと用済みにしてしまうから」


 シビュラブラック、シビュラシルバー、シビュライエロー、シビュラピンクは廃材を一つ一つ吟味しながらそんな会話をする。その会話はまるで機械の様に抑揚のないものだった。


 「なるべく早くして。ここを管理していた人間は始末したが、誰かが通る可能性がある」

 「解ってる。ブルー、協力して」


 そこまで言うと、6人は魔法を発動する。急いでいる今だからこそ相応しい、「必要なものだけを選び取る魔法」を。

 それと追加で「任意の場所に転送する魔法」と「瞬時に組み立てられる魔法」も発動する。6人は出来に満足したように口元に笑みを浮かべると、各地へと散っていった。

 完成した装置は漣市と他の市の境の地点に設置される。装置の中央からはドリルのようなものが地面に向かって伸びていき、穴を掘り始めた。



 ザウレンジャー達は建物の外に出て、一直線に走り続けた。


 「がんばれ。ここを走り切ればとりあえずは安全だ。少しでもあそこから離れるんだ!」


 レッドソードが先頭になり、ザウレンジャーはその後から続く。だが5分ほど走ったとき、全員をサーチライトが照らした。


 「止まれ!」


 そこでバットレンジャーを始めとした、賛成派戦隊と魔法少女達が現れる。


 「バットレンジャー……」

 「奇遇だな、こんな場所で会うなんて。ドリームホワイト」


 全員変身を解除しているが、いつ襲ってきてもおかしくない状態だった。


 「バットレンジャー、聞いてください。俺達にはどうしてもこの人たちが必要なんです」

 

 修二が状況を伝える。レッドバットは一番前へと出ると、要求を伝えた。


 「今ならまだ引き返せる。その二人を引き渡してくれ」

 「戦う相手を間違えています。少なくとも俺達ではないはずです」

 「彼に何を吹き込まれたんだ?一緒に世界を変えようとでも言われたか?」

 「何も吹き込まれていません。俺達は俺達の意思で行動しているだけです」

 「そうだ。それに私は改革をするならば自分の手でやるつもりであって、この子たちを引き入れる気はない。最も改革に使おうと作り出したものはすでに私の手に負えない存在になってしまったがな」


 ドリームホワイトがレッドバットに歩み寄った。


 「こうなってしまった以上、もう改革は出来ない。だから落とし前を付けたいんだ。どうか解ってくれ」

 「君が心からそう思ってくれているならば歓迎するが、我々は責任を追及しなければならない。シビュレンジャーを生み出した責任をな。だから君を逃がす訳にはいかない……制御できるか解らないものを作ったりして、もしもの事は考えなかったのか?その結果多くの戦隊と魔法少女を危険にさらしただけでなく、後輩に尻拭いをさせて、君は戦隊と魔法少女全てをどうしたいんだ?」

 「君こそどうしたいんだ。改革をする気力はないが、魔法少女と戦隊の未来を本気で考えているならば登録法などというものに賛同するはずはない!」

 「今後の事を想えば当然の事だ!」

 「それは違う!決定権や個人の自由を奪い取るだけだ!」


 いつの間にか、修二そっちのけでドリームホワイトとレッドバットの言い争いになっていた。その場の誰もが会話に入る事が出来ず、黙り込むのみだった。


 「……もういい。君がここまでわからずやだったとは思わなかったよ」

 「それはこちらの台詞だ」


 レッドバットは修二の方を向く。

 

 「どうしてもドリームホワイト達を引き渡す気が無いなら、力づくでも止めさせてもらう」

 「それがあなたの決めた事なら、やってみてください。俺達も全力で逃げますから」

 「後悔するぞ」


 そういうと、バットレンジャー5名は変身ブレスレット・バットフェザーで変身した。それと同時に他の戦隊や魔法少女も次々と変身する。


 「革命変身、バットフェザー!」

 「重力変換!」

 「超進化」

 「分身変化」

 「スーパーマント!」

 「防御変身!」


 変身が完了した戦隊や魔法少女が次々と名乗りを上げた。


 「正義革命、レッドバット!」

 「勇気革命、ブラックバット!」

 「知性革命、ブルーバット!」

 「高速革命、イエローバット!」

 「慈愛革命、ピンクバット!」

 「革命戦隊、バットレンジャー!!」


 「スーパーファイター、グラビレッド!」

 「ジオブルー!」

 「カゲブラック!」

 「ホワイトバード!」

 「イエローガード!」


 「ウォーターリリー!」

 「みんなに笑顔を届けます!魔性少女キャンディ!」

 「魔法のブリュンヒルデ、我が名はアイビー!」

 「アルストロメリア!」

 「ランタナ参上!」


 一列になって歩いてくるバットレンジャー達。それと相対する修二達ザウレンジャーとチェリーブロッサム。修二は後ろを振り返って言った。


 「俺達はここで彼らを何とか食い止めますから、皆さんは速くドリームホワイトを!」

 「言うようになったじゃないか。だが乗りかかった船だ。俺達も手伝ってやるよ」

 「私たちにも手伝わせてよね。あなた達を守ることも入ってるんだから!」

 「そういう事だ。私もあのわからずやを殴ってやりたくなったんでな」


 できれば戦いだけはしたくなかったのだが、もう避けられない事態だと思った修二は頷いた。


 「よし皆、変身だ!」


 「ダイナロアー!」

 「選手入場、チェンジャーボール!」

 「装甲召喚!」

 「テクノアップ!」

 「神龍転身!」

 「レッツスタート、アドベンチャー!」

 


 「紅の牙、ザウレッド!」

 「黒い闘魂、ザウルブラック!」

 「青い稲妻、ザウルブルー!」

 「黄色の剣閃、ザウルイエロー!」

 「桃色の弾丸、ザウルピンク!」


 「強竜戦隊ザウレンジャー!」


 「五番・サード、ドリームホワイト!」

 「レッドソード!」

 「シューティングウォリアー、バーチャルピンク!」

 「怒涛龍、ブルードラゴン!」

 「グリーンベンジャー!」


 「チェリーブロッサム!」

 「優しい光の魔法、サンフラワー!」

 「オキザリス!」

 「甘いお菓子は美味しい魔法、カスタード!」

 「ハイドランジャー」

 「……ブラックサレナ、です……」


 ついに揃った両陣営。今、禁断の戦いが始まろうとしていた。

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