PART:3

 ザウレッドとシビュラレッドは階段の踊り場で格闘していた。

 ザウレッドのキックをシビュラレッドはギリギリのタイミングでジャンプして避け、続いて放ったパンチを片手で受け止め、横にひねり上げた。

 そして残った片腕で至近距離からザウレッドに電撃を浴びせたのだった。


 電撃を受けたザウレッドは部屋の外まで吹き飛ばされ、階段から下へ落下した。

 いまや屋敷の中で闘っていないものは一人もいなかった。シビュレンジャーだけでなく騒ぎを聞きつけた反対派勢力が屋敷になだれ込み、待機していた賛成派勢力と激突。大乱戦になっていた。


 「ザウレッド!」

 吹き飛ばされたザウレッドを追って、チェリーブロッサムとザウレンジャーが飛んでくる。シビュレンジャーも追って来ると、突然喋り始めた。


 「シビュラレッド」

 「シビュラブラック」

 「シビュラブルー」

 「シビュライエロー」

 「シビュラピンク」

 「シビュラシルバー」


 「我ら、魔術戦隊シビュレンジャー」


 「あいつら喋れたのかよ!」

 「何というか、名乗りの動きもすごく不気味ね」

 

 一斉に戦隊や魔法少女達の注目を浴びる中、シビュレンジャーはお得意の機械的な動きで使う電撃の魔法で周囲を無差別に攻撃し始めた。

 体勢を立て直したザウレンジャーとチェリーブロッサムは撤退しようとするが、彼らもまた賛成派の一人と認識されているらしく、攻撃してくる魔法少女や戦隊もいた。彼らやシビュレンジャーにそれぞれの武器や魔法で応戦しつつ後退していくと、ドアから入ってきた一団と激突した。それは彼らの良く知る人物だった。


 「き、君たちは!」

 「レッドソード!それにみんなも……」

 「ドリームホワイトの確保に向かった一団が反対派の奇襲にあって乱戦状態にあるって聞いて増援で来たんだが、思ってたより凄い事になってるな……」

 「一体何をどうしたらこんな騒ぎが起こるのよ!」

 「理由は後で説明しますから、今はドリームホワイトの確保を手伝ってください…うわ来た!」


 カスタードに向かってザウルイエローが叫ぶと、背後で爆音が起こった。見ると階段を下りながらシビュライエロー、シビュラブラック、シビュラレッドが電撃を発射しながら無差別に魔法少女や戦隊を攻撃していた。

 部屋から出て来たバットイエローとバットブラックが剣を持って背後から斬りかかるが、シビュライエローとシビュラブラックが剣を召喚して受け止め、シビュラレッドが手裏剣のようなものを投げる。その手裏剣は手榴弾だったらしく、空中で爆発し、近くにいた者たちを吹き飛ばす。

 ザウレンジャー達の近くにも飛んできたが、オキザリス、ハイドランジャー、サンフラワーが空中で強制的に爆発させ、残った爆弾は、ザウルブラックを指導したブルードラゴンが所属する竜拳戦隊ドラゴンジャーが空中に飛んで蹴り返す。

 増援でやってきた戦隊と魔法少女も各々が戦いを始めていた。グリーンベンジャーはレッドソードと共にオレンジ、カンナの剣と斬り合いを始め、バーチャルピンクはクロスレッドのチョップを片手で受け止め足払いをジャンプで回避し、逆に胸にキックを当てた。

 

 戦いは長く続くかと思われたが、ブルードラゴンがアクアレッドとスコーンにラリアットをぶつけて横転させていた時に入った一本の通信が各勢力の戦いを少しずつ終わらせていった。


 『こちらレッドバット。ドリームホワイトを確保した。繰り返す、ドリームホワイトを確保した。だが怪我が酷いので治療が必要だ』


 未だに戦闘を続けているのはシビュレンジャーだったが、彼女たちもエネルギー切れを起こしたらしく、電撃の威力が弱くなっていた。それを察知したらしく、6人全員が集まると瞬間移動の魔法で何処かへ転移した。


 シビュレンジャーが消えた事により、全員が武装を解除した。そして反対派たちは駆けつけた戦隊と魔法少女達に次々と取り押さえられ、連行されていった。

 その中には、レッドバットとブラックバットに左右から支えられて連行されるドリームホワイトの姿もあった。戦いの疲労からその場に座り込んだザウレッドは、そこから目を話すことが出来なかった。


 

 大勢の怪我をした戦隊、魔法少女が運び込まれたため医務室での数が足りず、そこはまさに野戦病院のようだった。

 ザウレンジャーやチェリーブロッサムも治療を受けながら、走り抜けていく護送車を眺めていた。


 治療を受けたザウレンジャーとチェリーブロッサムのところにレッドソードたち訓練してくれた戦隊と魔法少女達が近づいてきた。

 「いやー、お前らも災難だったな。まさかシビュレンジャーが襲ってくるなんて」

 「ええ。でもシビュレンジャーはドリームホワイトが作ったって聞いたんですが、どうして彼まで巻き添えにしたんでしょうか?」

 「それはこれからの尋問で明らかになるっすよ。でもまさかあのドリームホワイトが敵と組んでたなんて以外だったっす」

 「あの人、これからどうなるんですか?」

 「尋問、心理鑑定の後に送還だろうな」

 「あれだけの事やったんだから、絶対ただじゃすまされないぜ」


 その時、バットレンジャーの乗る装甲車のバットトレーラーが通って行った。その中にドリームホワイトが乗せられているのだと、その場にいた全員が思った。

 


 


 

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