PART:2

 式典は緊急中止となり、数多くの戦隊や魔法少女が傷を負った。

 無事な者たちは襲撃の実行犯である6人の少女、シビュレンジャーの行方を全力で捜索していたが、有力な手掛かりは何一つ見つからなかった。

 そうこうしている間にも反対派と賛成派の戦いは各地で巻き起こっており、数多くの戦隊や魔法少女達が拘束され、説得や交渉の末、あるいは半強制的に反対派に転向させられたり、反発して刑務所のような場所に入れられたり、そして中には引退して去っていく者たちもいた。

 どうやら反対勢力は地下に潜伏して独自に人助けをしており、現れたという報告を受けた賛成派と戦っているらしかった。しかしどの戦いも最終的には拘束されているようだった。

 ザウレンジャーとチェリーブロッサムはどっちつかずといった現状を維持していたが、シビュレンジャーの捜索に参加していた。だが彼らにとってはシビュレンジャーの襲撃よりも重大な事態に遭遇していた。

 

 「この監視カメラ映像に、シビュレンジャーと一緒にある人物が写っていた。もしかしたら、彼らが何らかの情報を持っている、あるいはシビュレンジャーに我々の情報を流していたのかもしれない。見つけ次第確保するように」


 いつの間にか捜索班のリーダーとなっていたバットレンジャーにそう言って見せられた映像には、シビュレンジャーの後ろの方に立っているドリームホワイトが写っていた。さらには彼がシビュレンジャーが入っていた水槽に何か細工を行っている映像まで発見されたという。


 「どうしてあの人が……」

 「そういえば、君たちはドリームホワイトに教えてもらった新人だったな」

 「ええ」

 「気持ちは解るが、彼らは今重要参考人…もしくは反逆者かもしれないんだ。どうか協力してほしい」


 今、ザウレッドはシビュレンジャーが侵入したという情報があった屋敷に続く道路を新しく貰ったバイクで疾走していた。後ろからはバギーカーに乗った四人と、空を飛ぶ魔法で飛んでいるチェリーブロッサムが付いてくる。登録法が可決された以上、この捜索任務も魔法界と戦隊協会から与えられた仕事となるため、帰れば何らかの報酬が貰えるようだったが、今の彼には報酬には興味がなかった。


 「ドリームホワイトは反対派の筆頭だ。もしかしたら、シビュレンジャーと組んで反乱を企てているのかもしれない」


 そんな意見が出ていたが、ザウレッドにはとても信じられなかった。無論自分たちを訓練してくれた戦隊や魔法少女達も同意見だった。何としても真相を確かめたかった。

 

 到着した屋敷はすでに廃屋になっており、整えるものがおらずに殺風景な庭は不気味なほど静まり返っていた。

 すでに数名の魔法少女と戦隊たちが待機していた。ザウレンジャーが先に侵入し、ドリームホワイトかシビュレンジャー、あるいは両方を発見次第突入する予定になっていた。

 

 「ここみたいだね」

 「本当にこんな場所にドリームホワイトは入ってったのか?シビュレンジャーと一緒に」

 「真相は入らなければ解らないわ」


 周囲を警戒しながら、6人は屋敷の扉を開ける。ボロボロな外見とは裏腹に、中は先ほどまで使われていたかのように綺麗に整えてあった。

 部屋の二階へ上がると、半開きになっている扉があった。そこまで行った時に通信が入った。

 

 『気を付けろ。状況を確認次第我々も突入する』

 「今のところ問題なしです。これから怪しい部屋に入ります」


 レッドバットからの通信に応え、ドアをあけ放った。


 部屋の中は研究室らしく、資料や実験に使われる器具らしい道具が乱雑していた。そして、その部屋の中にドリームホワイトは佇んでいた。


 「やあ、きっと来るのは君たちじゃないかなと思っていたよ」

 「ど、ドリームホワイト…」

 「解っているよ。一体私があの場所で何をしていたのか、そしてシビュレンジャーと一体どういう関係があるのか、という事が聞きたいんだよね?」

 「嘘ですよね?あなたが彼女たちと通じてるなんて…」

 「あなたの事をクーデターの首謀者だという人たちがいます。疑いを晴らしたいなら私たちと一緒に来て、証言をしてください」

 『建物の包囲は完了した。これより我々も侵入する』


 緊迫した状況の中も通信機からはレッドバットの連絡が届く。

 

 「今更隠し通せることでもないから、すべてを正直に証言しよう…と言っても君たちの考えている通りだけどね」

 「それじゃあ…」

 「そうだよ。私は確かにシビュレンジャーと組んでいた」

 「一体何のために?」

 『屋上にも待機完了』

 「というのもあの子たちを生み出す計画は、私の主導と私自身のデータを基に作ったんだ。魔法少女としてのデータは彼女で得られたものさ」


 一体いつからいたのだろうか、ドリームホワイトの横から喪服を着た魔法少女らしき人物がすっと現れた。


 「紹介するよ。ブラックサレナ、私の同志だ」

 「ブラックセレナです、よろしく……」


 ブラックサレナはか細い声であいさつし、軽く会釈をした。


 「じゃあ、貴方は昔いたっていうタカ派の人物だったんですか?」

 「君たちから見ればそうなるのかな。とにかく私たちは魔法少女と戦隊の力を持った人造人間を作って、生ぬるかった当時の体制に反乱を企てたんだ」

 「反乱……」

 「最も計画が漏えいしたことで失敗しちゃったけどね。私は刑務所に入れられ、3年前に出所し、第二の人生を歩むことにしたがかつての思いを捨てたわけではなかった。そんなときに君たちがすべて廃棄されたと思っていた生き残りを見つけた事で、再びクーデターを起こそうと考えた」

 『これより突入を開始し、犯人を確保する』

 「だが、彼女たちは眠っている間に自らに与えられた使命と自分の記憶の再プログラミングを行っていた。式典会場襲撃時は私の命令は何とか受領したみたいだが、今は命令を聞くかどうか……」


 その時、天井が大爆発を起こし、稲妻と屋上で待機していた戦隊と魔法少女が次々と落下してきた。


 「遅かったようだ……」


 ドリームホワイトが爆発した場所を見上げる。

 6人の予想通り、あいた穴からシビュレンジャーの6人がふんわりと舞い降りて来た。爆音を聞きつけ、部屋の外に待機していたバットレンジャーを始めとした戦隊と魔法少女達が部屋に突入した。


 「来たぞ、シビュレンジャーだ!」

 「ドリームホワイトもいるぞ!確保しろ!」


 犯人確保用ガス弾が部屋の中に投げ込まれるが、シビュラシルバーが天井の穴に蹴り飛ばして外で爆発させる。シビュラブラック、シビュラブルー、シビュライエロー、シビュラピンクの4人が向かっていき、シビュラレッドが電撃を発射してドリームホワイトとブラックサレナを壁ごと外へ吹き飛ばした。

 ダメージを受け卒倒した二人を無視して、シビュラレッドはザウレッドに切りかかってきた。

 さらに外に待機していた者たちも反対勢力の襲撃にあい、屋敷とその周辺は大混乱に陥った。

 


 

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