開戦
PART:1
どこかの場所で、複数の戦隊と魔法少女が戦いあっていた。
「インパクト・ボルト!」
「マイティ・マイティ!」
雷属性となった属性戦隊エレメンターの電気攻撃と、サルビアの「強い光線を発射する魔法」が激突し、周辺に爆発が起こった。
叫び声を上げながら植物戦隊プランターが蔦の鞭を振るって別の場所でプレッツェルと頭脳戦隊ブレインジャーに銃を撃っているをするユーカリと猛獣戦隊ビーストマンの背後から襲い掛かる。ユーカリとビーストマンはそれに気づき、剣と爪で受け止め、ビーストブラックとビーストブルーがパワーで押し返し、ユーカリはプラントレッドの剣とつばぜり合いになっていたが脇に蹴りを入れ、蔦を剣で振り払い、さらにもう一発キックを見舞って吹っ飛ばした。
閃光戦隊ライトレンジャーが強力な閃光でミモザとカヌーレ、陽光戦隊さんキャノンの眼を潰し、光線銃ライトガンを撃って周辺に爆発を巻き起こす。
戦いは、騒ぎを聞きつけた魔法界と戦隊協会の人事部が止めに入るまで継続された。
シビュレンジャーの脱走から2日が経過した。必死の捜索も空しく手掛かりは何一つ掴めないまま、承認式前日を迎えた。
式典会場となる講堂はセッティングを担当する戦隊や魔法少女達でごった返していた。そんな中、ハイペリカムは送られて来た報告書を見て頭を抱えていた。
危険な集団であるシビュレンジャーの脱走だけでも問題だというのに、魔法界では登録法の是非を巡ってついに賛成派と反対派の間で武力衝突が起こるという事件も発生してしまった。すぐに鎮圧部隊が送り込まれ、乱闘騒ぎになる前に事件は終息したが、遂に起こってしまった事態に人事部は対応に追われ、てんてこまいだった。
横から戦隊協会人事部の極秘戦隊ナンバーマンのブルー、ナンバーツーが横から資料を覗き込んで言った。
「ついに最悪な事態が起こってしまいましたね……」
「そうだな。正直これ以上仕事を増やさないで欲しいものだが」
「それはこちらも同じです。やはり登録法の施行は少し早すぎたのではないでしょうか?」
「そうかもしれないが、多くの世界がこの法律に同意を示している。今更やめるわけにもいくまい」
「そうですね。またこんな騒ぎが起こらなければいいのですが……」
矢口修二は家の自室で、明日の式典のプログラムを見ていた。明日の式典は全魔法少女と全戦隊に参加が要請されている為、早起きして会場に行かなければならない。幸い明日は休日になっていた。
一通り目を通した時、携帯電話が鳴った。出てみると友菜だった。
『あ、修ちゃん。今話せる?』
「いいけど、何か用か?」
『えっとね、修ちゃんと結構話してないような気がしたから、話がしたいなーと思って』
「いつも魔法界で話してるじゃん」
『でもその時は変身したときにほんの少し話してるだけで、元の世界でゆっくり話せてないでしょ?だからお話したいなーって』
そうだろうか?と修二は思ったが、よく考えてみれば学校から帰ればすぐに魔法界に向かい、変身して合流し、元の世界に戻るとすぐに寝てしまうため、友菜とゆっくり話す機会はザウレンジャーになってからすっかり減ってしまっていた事に気付いた。
「そういやそうだったな。じゃあ何話す?」
『修ちゃんがどう考えてるのか教えて』
「どうって……登録法の事?」
『そう。修ちゃんも聞いたでしょ?賛成派と反対派で戦いになっちゃったって』
武力衝突の件はもう多くの戦隊や魔法少女の間で噂になっていた。参加していた戦隊と魔法少女は全員が拘束され、刑務所のような場所に入れられいていると聞いた。そのことで双方のスタッフが大忙しになっている他
「人事部があいつらはベテランで実力もあるし、もっと大人かと思ってたよって嘆いてた」
と今日の訓練でハイドランジャーが言っていたことも覚えている。それだけ今回の騒動が与えた衝撃は大きかったのだろう。
「そりゃ聞いたけど、それがどうかしたか?」
『…怖い…』
「怖い?何が」
友菜はすぐに答えず、少しの間二人を沈黙が襲った。
『私、学校でもあまり友達が出来なくて…修ちゃんしか話せる相手がいなかったの。でも修ちゃんが戦隊になって、私が魔法少女になって、それぞれの人達と一緒にいることが多くなっちゃって、何だか修ちゃんとの間に距離が出来ちゃったみたいに思って…』
いつもと違う様子の友菜を前に、修二は黙って話を聞くしかなかった。
『それで、今回の事で戦隊や魔法少女が戦いあっちゃって、私が他の戦隊や魔法少女と戦うなんて嫌だし、もしも修ちゃんと戦うなんてことになったらって考えたら、怖くなって…』
後半は殆ど泣きが入った声だった。修二は泣き出すという普段の彼女からはあまり想像できない事態に驚き、彼女を元気づけようとした。
「おいおい泣くなよ突然。大丈夫だって、そんなことは絶対ねーから」
『…本当?』
「お前と喧嘩した事、過去に一度でもあったか?俺がお前と戦う何てことあり得ねえから、安心しろって、な?」
『…うん』
何だったら俺が保証書書いてやるよと念を押すと、友菜は鼻をすすりつつもようやくいつもの調子を取り戻した。
『信じていいんだね?』
「当たり前だろ」
『それを聞いて安心した。じゃあ明日速いからもう切るね、おやすみっ!』
電話は切れた。修二は再びプログラムに目を通しつつも、電話越しとはいえ久しぶりに友菜と話ができた事を密かに喜んでいた。
翌日、魔法界では戦隊・魔法少女登録法の承認式が開催された。
会場には数多くの戦隊と魔法少女達が席についていたが、半数以上の空席が目立ったが、きっと反対派だろうなと、会場に入ったザウレッドは思った。知っている戦隊ではドリームナインがいなかった。
一緒に来ているチェリーブロッサムと一緒に他のザウレンジャー達を捜していると、端の席からザウルブラックが手を振って呼んだ。
「おーいリーダー!チェリーちゃん!こっちこっち!」
「あんまり大声出すなよ。恥ずかしいじゃん、こっちが」
「だってこうでもしないと気付かなかっただろ?」
「そりゃあそうだけど」
「それより早く席につこうよ」
チェリーブロッサムが言って来たので席に着く。待つこと数分、開会の時間になるとナンバーマンとラヴィアン・ローズが登壇する。代表して、ナンバーワンがスピーチを読み上げた。
「本日はこの式典にこれほどたくさんの戦隊と魔法少女が集まってくれたことを嬉しく思う。さて、もはや皆が知っている事だと思うが、我々の大きすぎる力が一つの村に厄災をもたらした。この事件は我々に、力のあり方について改めて考えさせる事となった。悲しい事件だったが、これで後戻りしてしまうのではなく、むしろ未来に向かって前進する事、悲劇をもう二度と繰り返さないよう戦おう。まだ実験的な導入となるが、この法案を支持してくれた諸君には心から感謝し、ここにいない者たちにもいつの日か理解が及ぶことを願う。それでは……」
あまりにも長いスピーチだったので、ザウレッドは窓の外を向いていた。そしてそこにいた人物を見て驚愕した。
あの6人の少女がこちらを見て、両腕を突き出している。両腕からはエネルギーが迸っていた。
「みんな逃げろ!!!」
ザウレッドが立ち上がって叫んだ瞬間、強力な雷の魔法が会場を襲った。
会場は一瞬にして大爆発し、数多くの者たちが下敷きとなった。
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