PART:4

 それから数日が経過した。学校から家に帰った修二と友菜は、魔法界と戦隊協会からの緊急招集と書かれたメールを見て、魔法界へとワープした。

 もうすでに他のザウレンジャーや他の戦隊と魔法少女達は以前の講堂に集合しており、ザウレッドとチェリーブロッサムが一番最後の到着のようだった。

 ザウルブラックの隣に座ったザウレッドは、ザウルブラックに招集について聞いた。


 「緊急招集って一体何なんだ?」

 「解らないよ。俺達も同じの受け取ったけど、詳細が書かれてないんだ」

 「何かよっぽど大変な事らしいわね。中東の事件がらみの事かしら?」

 

 中東の村でテロリストの爆弾実験を止めようとした戦隊と魔法少女が、爆弾諸共武器と魔法の威力が強すぎて村の多くを吹き飛ばしてしまった……というニュースは、ザウレンジャーとチェリーブロッサムも知っていた。大変な事態だったらしく、他の戦隊と魔法少女の間にも「今後何かしらの対策が取られるのではないか」という噂が流れていた。

 そうこうしているうちに、クマとナンバーワンが登壇した。戦隊協会のトップの登場に、それまで喋っていた戦隊たちは一斉に静まり返った。

 クマは手に持っていた分厚い本を開くと、これから重要な報告があることを伝えた。


 


 世界中の人々はこれまで、戦隊と魔法少女に返しきれないほどの恩を作ってきたが、それと同時に数多くの問題も生み出してきた。先日の中東の事件は記憶に新しい事だろう。長い間問題とされてきたことだが、一人一人が超兵器級の力を持った集団が誰の管理もなくやりたい放題という現状を放置してしまっていては世界が黙っていない。そこで


 「戦隊・魔法少女登録管理法。これを試験的にだが施行することとなった。これから君たちは魔法界及び戦隊協会上部の監視下に置かれ、必要と判断された時のみ出動することとなる」


 静寂が続いたのは一瞬の間だけであり、その言葉の意味を理解した魔法少女と戦隊たちは再びざわつき始めた。


 「登録管理法?」

 「一体どういうことだ?」

 「もう自由に動けないってこと?」

 「なんだそりゃ?」


 ザウレンジャーとチェリーブロッサムも例外ではなかった。ザウレッドの横のチェリーブロッサムは不安そうな表情になり、ザウルブラックとザウルイエローも騒ぎ始める。ザウルブルーとザウルピンクは顔を見合わせ、何やら話をしていた。


 「この法律に登録すれば、今後はボランティアではなく魔法界と戦隊協会からの「仕事」という扱いになり、お給料や手当を支給することが出来ます」

 「一週間後に承認式が行われる。どうか登録の検討をしてほしい。何か質問があるというものはいるかな?」


 一人の戦隊が手を上げた。バーチャルピンクだった。


 「もし登録に応じない場合はどうなりますか?」

 「……あまり言いたくはないが、引退してもらうほかないな」

 「さっき試験的って言ってましたけど、いつ正式に採用されますか?」

 「しばらくの間は様子見となるがもしこれでいい結果が出せるならば正式採用される事だろう。話は以上だ」


 それだけ言うと、クマとナンバーワンは舞台袖に消えていった。





 当然だが、戦隊と魔法少女の意見は真っ二つに分かれた。講堂の中は

今や話し合っている者が一人もいない騒がしい状態になっていた。


 「ナンバーワンは俺達よりも立場が遥かに上なんだ。従うしかないだろう」

 「それで従えば俺達は監視付きで動くことになるんだぞ。まるで犯罪者みたいにな」

 

 イエローガードとレッドソードが言い争う。


 「私たちの存在が非合法から合法に変わるだけよ。今と変わることは無いわ」

 「でもそれじゃあ、目の前で命の危機にさらされている人がいても上が助けるなと言ったら助けないって事になるわ。それは人助けとは言えないんじゃない?」

 「それにもしも上がワルの集まりだったらどうするよ?」


 アルストロメリアやハイドランジャー、ブルードラゴンが話す。そんな中、一人冷静を保っている戦隊がいた。バットレンジャーである。


 「そこの大将はさっきからだんまりっすけど何か意見は無いんすか?」

 「もう決めてんだよあいつは。何せ中東のあの事件を起こした当事者があの人達だからな……」

 

 グリーンベンジャーとオキザリスが小声で話す中、レッドバットが皆に向かっていった。


 「俺は一戦隊のリーダーとして、そして事件の当事者としてこの法に賛成する。考えてみたんだが、我々が戦うたびに悲劇の数も人知れず増えている、そんな気がしてならないんだ。そして自分は悲劇の元凶となった。人々の信頼を取り戻すためにも、自分は賛成したい」

 「私も同じ。多くの人をこれ以上犠牲にしないためにも同意するわ」


 ウォーターリリーも同意した。悲劇の原因が彼女の魔法にもあるため、ウォーターリリーも同じく責任を感じていたのだった。

 そんな彼らに、ドリームホワイトは反論する。

 

 「自分たちの目的はあくまでも人助けだ。これまで十分すぎるほど責任は果たしてきただろう。これ以上何を求めるんだ?」

 「だからって野放しにしたままでは悪者と同じだぞ?」

 「選ぶ権利が失われてしまう。自分の判断では動けなくなるぞ?」


 喧嘩に発展しそうな二人の間に生物戦隊ジオレンジャーのジオレッドが割って入って止めた。 


 「ちょっと待て。皆少し偏執的かつ感情的になりすぎていないか?第一この法はまだ実験段階で今すぐに施行されるというわけではないんだし……」

 「いいや上は多分今すぐにでも始めたいだろう。僕らが起こした事件は、一つの時代の終わりの鐘でもあり、新しい時代の始まりを告げる鐘でもあったのさ」


 イエローバットがそういうと、他のバットレンジャー達も頷いた。皆レッドバットと同じくこの法律には賛成なのだろう。



 ザウレンジャーとチェリーブロッサムも彼らなりに話し合いをしていた。

 「俺達、これから一体どうなるのかな?」

 「このまま何も起こらないといいけど……」

 「いえ、絶対に何か起こるわ。事の次第では真っ二つに分裂して内戦が起こるかもしれないわね」

 「な、内戦……」

 「それって同族同士で闘いあうって事、になるよね?」


 チェリーブロッサムはザウレッドに不安そうに言った。

 

 「もし魔法少女や戦隊同士で闘うなんてことになったら、どうすればいいの?」

 「それは無い……と思うけど、完全に賛否分かれちゃってるからな。何が起こってもおかしくはないよ」

 「私たちはどっちに付くべきだと思う?」

 「どっちの言い分もなんとなくわかるから、何とも言えないなあ……」


 結局話し合いは平行線で終わったが、魔法少女も戦隊も賛成派と反対派の二つの派閥が生まれた。


 




 同じころ、誰もいない研究所の中に置かれている電源の切れた水槽にひとりでに明かりが灯り、中の人影が腕を動かしていた。

 だがそれに気づいた者は一人もいなかった。


 

 





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