PART:3

 ザウルスファイターで帰還した6人は、回収した水槽の運び出しを手伝っていた。

 外には調査団が水槽の到着を待っており、格納庫から水槽が運び出されると次々と群がってきて、水槽を台車の上に乗せると研究棟と呼ばれる場所に運んでいった。


 「おかえりなさい~」

 「ご苦労さまでした」


 クマとラヴィアン・ローズが駆け寄ってきた。だがクマは最初に逢った時の服装とは異なり白衣を身に着け、「クラウディオ・マッケンジー」と書いてある名札を首から下げていた。

 まさかこれがクマの本名?そう思った時ラヴィアン・ローズが口を開いた。


 「実はあなた達が出かけた後にまだ生きている防衛システムがあるという報告が出たのです。報告が遅れてしまい思わぬ被害を被ってしまったようで、申し訳ありません」

 「いや、そのことはいいですよ。訓練の成果出せたし。それよりも今は、これが何なのか知りたいです」


 賢次は運ばれて来た水槽を一瞥して言った。


 「私も古い資料でしか見た事がありませんが、その昔強力な魔法を自由に使う事が出来る人間を、人工的に生み出すという計画があったと聞きます」

 「それって人造人間って事ですか?」

 「ええ。そして魔法の制御には戦隊の力が使用されているそうです」

 「戦隊と魔法少女のハイブリッド、って事か」

 「そうです。遠い昔に研究は打ち切られ、実験体はすべて廃棄されたと公式記録には残っていますが……」


 そこまで話した時、研究員に解析が始まるのでと一同は部屋から出されてしまった。


 

 難波尚一は、テレビのニュースを見て自分の出した被害の大きさについて改めて思い知らされていた。

 ニュースによると、死者43名、負傷者157名。そして粉々に吹き飛ばされたり、いまだに火災が起こっている家屋の映像が報道されていた。そして兵士が爆発した場所には巨大なクレーターが出来上がっていた。

 テレビの映像は、イエローバットこと杉下直人によって消された。尚一は隣に座った直人に言った。


 「止めようがなかった。もっと早く爆弾を括り付けていることに気付いていれば、こんなに被害を出さず、あの兵士も死ぬことはなかっただろうに」

 「確かにそうかもしれない。だが今更自分を責めても仕方がないだろう」

 「ならネットの動画を見ればいい。モザイクがかかってるが、発射する瞬間の映像があったよ」

 「あまり自分を責めるもんじゃない。つらくなるだけだ」

 「いいや、俺のせいさ。ウォーターリリーにも迷惑をかけてしまった。いや彼女だけでなく、他の戦隊や魔法少女達にまで……」

 

 尚一はバットレンジャーのレッドとなってからは、リーダーという責任ある立場に誇りを持っていた。自身の責任感の強さも相まって、予想外の事態に焦るあまり、甚大な被害を出してしまった自分が許せなかったのだった。


 


 魔法界と戦隊協会の上層部も、この件について会議を行っていた。


 「何とも大変な事態が起こってしまいましたね」

 「ええ。この事件で犠牲になった人々に、主の救いがあらんことを……」


 シスターの魔法少女ライラックが祈りを捧げる横で、極秘戦隊ナンバーマンのナンバーワンが腕組みをする。他には電気戦隊サンダーマンのサンダーレッド、人事部のハイペリカム、鉄戦隊メタレンジャーのメタルレッド、パペットを片手に嵌めたマカロン等が集まっていた。


 「戦隊や魔法少女の仕事は確かに人助けですが、その都度周辺に被害を出す事はかねてから問題視されてきています」

 「軽いものは垣根を倒したとか悪人に怪我をさせた等ですが、酷いものだと街中でロボットを使って兵器密輸を止めたとか、今回の事件の様に建物諸共爆発物を処理する等……」

 「世界中に悪事を働く者たちがいる以上数は今後も増えていくでしょうが、だからと言って法を破って良いというわけにはいきません」

 「まったくだ。魔法少女や戦隊はたった一人でも核ミサイルに匹敵するほどの力を持っている。超兵器には制御装置が必要だ」

 「魔法界でも昔から活動方針には疑問の声が上がっています。他の国や場所の問題に自警団ぶって勝手に乗り込んで我が物顔で暴れ回り、強引に解決させる、下手をすればテロリストと同じだと」

 「世界の平和を守る抑止力として必要とはいえ何とも矛盾した存在ですな。魔法少女と戦隊とは」


 多くの意見が出される中、ナンバーワンが言った。


 「どうでしょう?この際実験的に戦隊及び魔法少女の活動を制限し、魔法界と戦隊協会の管轄下に置くという制度を導入する、というのは……」


 それで多少良くなるのならば正式に導入し、今と変わらない、もしくは悪くなるようなら別の策を考える……と補足付きで。


 「悪くないかもしれないな」

 「少し早急かもしれないが、適切な判断と言えるかもしれんな」

 「ええ。そうかもしれません」


 その会議の中ではだれも反対する者はいなかった。





 そのころ、研究所では運ばれて来た水槽の解析が始まろうとしていた。

 水槽の周りには多くの研究員が行き来し、資料を片手に話し合いをしたり、装置の配線を水槽に接続したりと、解析を進めていた。

 皆が自分の活動に夢中になるあまり、水槽の中の人型の物体が指をわずかながら動かしたことに誰も気づかなかった。

 

 

 



 


 

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