PART:2

 ザウレンジャーとチェリーブロッサムが出発したのと同じころ、中東のとある村に複数の魔法少女と戦隊が集まっていた。

 今日この村をテロリストが占拠し、新型爆薬の実験台として村を吹き飛ばす。と魔法界上層部所属の予言者型魔法少女マリーゴールドが予言したためであった。


 「どう?何か怪しい奴いた?」

 「さっきやけに大きい荷物持ってる人がいたけれど、あの人じゃない?」


 観光客に化け、通信機で会話をするのは、今作戦のリーダーである革命戦隊バットレンジャーのレッドバット、難波尚一と水着の魔法少女ウォーターリリーである。そこから少し離れた鉄塔の上には飛翔戦隊バードマンのホワイトバードとサロペットの魔法少女アルストロメリアが住民に発見されないよう注意しながら見回す。この作戦はバットレンジャー以外にも複数の戦隊から代表者が一人ずつ魔法少女とペアになって参加していた。


 「クックック……どこへ隠れようと無駄な事。サタンの千里眼から逃れられる者などいないわ」

 「……」


 ゴスロリ魔法少女アイビーと生物戦隊ジオレンジャーのジオブルーが村はずれの場所で待機する。

 魔女っ子のキャンディと重力戦隊グラビレンジャーのグラビレッド、防衛戦隊ガードマンのイエローガードとワンピースのランタナも捜索するが、あまり変化のないまま数分が経過した。


 「リーダー、ちょっといい?」

 「何だ」

 「今怪しいトラックがいくつか入っていったたよ」

 「こちらでも確認したわ。明らかに武装した人間が乗っている……。今止まって兵士たちが散会してるわ」

 「よし、作戦開始。今回も迅速かつ的確に、被害を最小限でテロを食い止めることを目標とする皆、いいな?」


 イエローバット達の報告を受け、レッドバットは作戦開始を告げる。事前に撃ちあわせた通りの場所へ各々向かっていく。


 「フッ、遂にこの時が来たか。邪黒の堕天使の出陣の時!」

 「……」

 「の、ノリが悪いぞ~!静かなる海の使徒よ!」

 「……」

 「……い、行きましょうか?」

 「ええ」


 アイビーとジオブルーが少し遅れて配置に付く。バットレンジャーの報告では兵士の数は16名。2人ずつに分かれて村の各所に爆弾を設置する模様だった。

 手始めに上空からホワイトバードが奇襲をかけ、兵士二名をパンチで卒倒させる。彼らが持っていた起爆装置はアルストロメリアが魔法で使用不能にした。


 「こちらホワイトバードとアルストロメリア。爆弾回収完了です」

 「こちらイエローガード&ランタナ。爆弾回収完了……何人かてこずっているみたいなので、援護に向かいます」


 ジオブルーとアイビー、キャンディとグラビレッド達は思わぬ敵の増援に苦戦しているようだった。魔法少女と戦隊ヒーローが誰かの命を奪う事や彼らの存在が公になり、事件が大事になる事をよしとしない魔法界と戦隊協会はターゲットの殺害を禁じている。しかし魔法少女や戦隊は一人一人でも力が十分強く、加減せずに攻撃すれば死なせてしまうため、気絶させる程度の力で相手を攻撃しなければならない。

 だが彼らが戦っているのは戦闘慣れしているプロ。相手が本気を出していない、または出せない事を瞬時に察知し、あの手この手で攻撃を加えて来た。

 一人が近くにある積まれている木箱の上からアイビーに向かって手榴弾を投げつけてきたが、瞬時にジオブルーが立ちはだかり光線銃ジオシューターで撃ち落とし、アイビーに覆いかぶさって爆発から守った。


 「……大丈夫?」

 「う、うむ……」

 

 ジオブルーがアイビーの無事を確認したとき、遠くから別の兵士たちがバイクに乗って接近してきた。だが先ほどアイビーに手榴弾を投げつけた兵士が箱の上から落ちて来た。ジオブルーがアイビーを抱きかかえて飛び立つと、木箱の上から一人の男が体をねじりながら落下し、すぐ下にいた兵士に踵落としを見舞った。


 「やっと来たか。遅いぞ!」

 「雑魚相手に何をてこずっている」


 爆弾を先に回収したレッドバットの声に応えた黒い革ジャンを着たワイルドな出で立ちの男性。彼もまたこの作戦に参加する戦隊だった。

 男は籠手に付いているスイッチを押す。兵士の一人がサブマシンガンを発射したが男は空中に飛んでスーツとマスクを装着。黒い忍び装束のようなスーツを身に纏う分身戦隊カゲレンジャーのカゲブラックへと変身した。


 「俺が奴らの武器を潰すから、その隙にやれ」


 言い終わると同時にカゲブラックは5人に分身し、忍者刀で兵士たちの武器を切り裂く。それぞれの武器が真っ二つになったのを切っ掛けにその場にいた戦隊と魔法少女が兵士たちを取り押さえ爆弾を回収した。

 だが兵士の一人が隠し持っていた爆弾の信管を引き抜いた。彼は用心のために爆弾を二つ持っていたのだった。さらには上着の下に大量の爆発物が巻き付いており、こちらもまた爆発のカウントダウンが始まっていた。

 それに気づいたカゲブラックが忍者刀を構えて走り出そうとしたが、レッドバットが阻止する。


 「よせカゲブラック!斬り殺してしまう!」

 「どっちにしろ爆発しちまうだろ」

 「任せて!」


 ウォーターリリーは兵士の体を魔法のシャボン玉の中に包み込み、動きを封じた。


 「もう解除している時間はない!やむを得ないが、バットブースターを使って爆弾を破壊する!」

 

 そういうとレッドバットは必殺武器「バットブースター」を転送し、射撃形態のキャノンモードへと変形させる。イエローバット、ブルーバット、ブラックバット、ピンクバットの4人も常に冷静なレッドが不測の事態に焦っている事を感じつつも後ろに付き、発射の体制を取った。


 「エネルギーフルチャージ完了!革命大砲!バットレーザー!!」


 レッドバットがトリガーを引くと、銃口から強力なレーザー光線が発射された。

 レーザー光線は一瞬で魔法のシャボン玉を包み込む。だが、レーザーの威力と魔法が双方ぶつかり合いを起こした結果、とんでもない事態が発生した。

 その場所に強力なエネルギーが発生し、周りを強烈な閃光が降り注いだのだった。


 「ま、まずいぞ!全員退却!!」


 レッドバットが叫ぶと、全員が兵士たちを連れて退却する。

 そしてレッドバットが退却した瞬間、巨大な、あまりにも巨大すぎる爆発が起こった。


 周辺の家や建物、騒ぎを聞きつけた人々の命を巻き添えにして……


 

 

 

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