第13話



「ジェイ!よく来てくれたね、さぁ、入ってくれ。」


 金の髪を長く伸ばし、緩く三つ網みに結った髪、海を思わせるような綺麗な青の瞳を持つ、目の前の男こそ、このルピナス帝国の上に立つ、『国王』の称号を持つ者である。


 名はアイリス=モルガナイト。争いを好まず、平和主義を貫き、国民を一番に考える心優しき王・・・俺から言わせれば、甘い考えの王様だ。


 無駄にテンションが高いな、と目の前でニコニコと機嫌良さ気にこちらを見るこいつを見ながら、促されるまま、部屋へと入る。


 すると、先客として、訪れていた先ほど俺を対応した奴の上司・・・カルミア=ジュードがこちらを見ていた。


 カルミアの称号は『教皇』で、国王と同等の権力を持っている。それから、その二つと同様の権力を持つ者は『元帥』と呼ばれる軍部のトップだ。


 現在はアフェランドラ=インガローズという人物で一言で表すと大変に暑苦しい人物である。


 ・・・カルミアが居るとすぐに本題にはいけないな、まぁ、カルなら言えば分かるだろう、と思いながら、「おい。」とだけ声をかける。


「ん?まぁ、お座りよ。久々に会えたんだ、ゆっくり話そう。」


 王はソファを俺にすすめながら、『チリン』と鈴を鳴らして人を呼び、「お茶の用意を。」と俺の分を用意させたらしかった。


 ・・・長くなりそうだな、と内心で溜息をついた。


「本当、久々ですね、ジェイ。」


 テンションの上がっている王とは違う、柔らかい声が聞こえた。


「嗚呼、カルが教皇になってからは、中々話せないからな。」


 すすめられたソファに腰を掛けると、それに満足したらしい王もそれを見ては腰を下ろした。


 俺の返事にピクリと反応したのは、『ペンタス』の奴だった。


「貴様!教皇様を呼び捨てにするなんて・・・。」


「・・・騒がしいのは、好きじゃなくてね。・・・教皇、彼に下がってもらいなさい。」


 声を荒げた『ペンタス』の奴に返事をしたのは王だった。にっこりと笑みを見せているが、目は笑っておらず、・・・どうやら、怒っている様子だった。


 それを聞いたカルは少し苦笑を零しながら、「今日はもう大丈夫です。先に帰ってなさい、私ももう少しで戻ります。」と真っ青になっている彼にそう声を掛けては退室を促した。


 そう言われては退室するしかない彼は俺を恨めしそうに睨むと、「・・・それでは失礼、致します。」と静かに告げた後、同じように静かに部屋から出て行った。


 カルは彼の後姿を見送り、次に俺へ視線を向けると同時に、綺麗過ぎる笑みを浮かべた。


「・・・ジェイからアイリスを訪ねるなんて、珍しいですね。・・・まさか、アイリスがしつこく言ったんじゃないですか?」


「当たり。相変わらず、面倒なんだよ、こいつ。」


 カルは俺の答えにふふっと綺麗な笑みを零しつつ、『しょうがないですね』といったカンジにアイリスへ視線を送る。


「・・・だって、ジェイが悪いんだよ。あの子・・・レイくん引き取ってから、全然構ってくれないから。」


 大の大人が何言ってんだか、と内心呆れつつ、拗ねた様に口を尖らせるアイリスを見てはもっと拗ねると面倒だなと苦笑を零した。


「悪かった、ちょっと面倒なことになってんだよ。」


 俺は本来の目的をさらりとぶっこむとアイリスは眉間に皺を寄せた。

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Egyptian Starcluster 狐月 @syu

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