第15話《魔本導くアナザーワールド》リプレイ⑩

~エンディング1 『日常への帰還』~


 イリュージョンキングと女神様を撃破したPCたち。

 その瞬間に、女神が使っていたエフェクトが解け、アナザーワールドは消滅してしまいます。

 

GM:それではエンディング。皆さんは……というか支部長は元いた高級マンションの一室に戻って来ました。阿東君と椎名君も同じ場所で目覚めます。エネミーエフェクトの効果は消失したようです。


ヒドゥン:「戻ってきたか……」

椎名 護:「お疲れ様でした……さすがに疲れた」


GM:周囲を見回すと、行方不明になっていた人たちが部屋を埋め尽くしています


ヒドゥン:イリュージョンキングのメンバーとかそこら辺に落ちてない?

椎名 護:(ぎゃあ)


GM:メンバーの顔もチラホラいます。その中に、小林茉莉もいます

ヒドゥン:とりあえず全員食って支部に収容しよう


 鞄がパカっと開き、収納されていた支部職員たちが、倒れている人たちを支部に運んで行きます。女神に取りこまれた人たちはまだ夢見心地でぼんやりしており、現実と異世界の区別がついていないようです。


GM:収納しました。

椎名 護:こうーそくー

GM:ただ、拘束されたメンバーの中に茨はいません。楠木君を小脇に抱えて立ってます。(倒された場合、あとのことはPCに任せるつもりでしたが、HP残り1ながら生き残っているので部下を回収して去ることにしました。)


~支部長の説得~

 去ろうとする茨を、支部長が止めます。

 正確には茨に連れられている楠木を、ですが。

 先ほどの戦いの最中、女神を庇った様子をみて、何か思うことがあったようです。


茨王子:「申し訳ないけど、私はこれでサヨナラさせて頂きますよ」

水島七里:「その馬鹿モノを渡してほしいんだけど……」

茨王子:「あれ? いるんですか? コレ。キミたちが手放したヒトでしょ」

水島七里:「要るとか要らないで言えば要らないけど。子供を護る気概があるなら使えるかもしれない」

茨王子:「……勝手なこと言うなあ」


 皮肉気な表情を浮かべる茨。

 その顔つきは、支部長に対する嫌悪感に満ちています。

 勝手気ままに人を使うところはありますが、こういう正義にも悪にもなりきれないろくでなしの面倒をみているのは自分だぞ、という自負もあるのでしょう。


ヒドゥン:「お互い様だ」

茨王子:「言っておきますけどね、確かにこいつはそういうところがあるけれど、あんたたちの仲間になんかなれませんよ。少しいいところがあっても、根っこのところは変わっちゃいない。またいつかFHに戻って来るに決まってる」

椎名 護:(うん、多分ダメな気はする)

ヒドゥン:「そうかも知れないな。だが、今一度信じるに値するものをそいつは見せた」

茨王子:「だからまた仲間にすると? ……いいでしょう」

椎名 護:(……マジで?という顔はしたくなるけど隠しておこう、支部長に考えがあるのだろう)

茨王子:「目が覚めて、元の場所に戻りたいとコレが言ったら、止めません。けど、今は持ち帰ります。私もリーダーとして最低限やらなければいけないことがあるのでね」


GM:エネミーエフェクト、瞬間退場Ⅱで二人は去ろうとします。


椎名 護:「……支部長、本気ですか?」

水島七里:「やり直す事が簡単とは言わんが、どうせFHにも成りきれんのだろう?私は門戸を開いているよ」


GM:支部長の言葉は届いたらしく、去り際の茨の顔は不快そうでした。去ってもいい?

ヒドゥン:どうぞ

椎名 護:ジョーは構わぬ

GM:それでは、二人は退場します


~女神様と最後の会話~


 アナザーワールドが崩壊し、現実に放り出されたのは救世主として誘拐された人々だけではありませんでした。

 現実から逃げ、異世界に閉じこもっていた女神も同じです。


女神様:「う……うう……」


 瀕死の女神の呻く声が聞こえます。


ヒドゥン:「許し合える事が、人間の持つ最高の力だそうだ。私は君達の可能性を信じている」

椎名 護:「……そうおっしゃるならば。……ん……んん……?」

GM:かなり消えかけですが、女神様が残っていますね。もう抵抗することも起き上がることもありませんが

椎名 護:油断なく様子を伺おうか

GM:何か聞きたいことがあれば、今のうち、といったところです

椎名 護:先ほど挙がった質問が主たるものかな?

ヒドゥン:「夢野百合子は何処に行ったのか、聞いても良いかな?」

GM:わかりました


~女神の真実の姿について~


女神様:「百合子は……あた、あたしだよ……わからなかった……? ジョーくん……」


椎名 護:「キミは間違いなくあのゆりちゃんだと。それはまぁ、分かるよ。でも、……どうやって、女神になんてなる力を得たの?」多分 E ロイスで頑張って女神とかになったんだろうけどきっかけがわからん


GM:えーとですね、たどたどしい話しぶりをかいつまんで要約すると、話は行方不明になったあの日にさかのぼります。あの日、百合子は両親の激しい言い争いに耐え兼ねて家を飛び出しました。飛び出したことに、ケンカ中の両親は気がつきません。

その先で事故に遭い、それと同時に彼女はオーヴァードとして覚醒しました


ヒドゥン:おぉ、転生トラック

GM:そう、転生トラック。

椎名 護:マジで転生トラック


GM:彼女の帰りたい場所はその時点で既に消失していましたので、誰にも気づかれることなくあっという間にジャーム堕ち。「物語の中に入ってずっとずっと楽しく暮らしたい」という妄想から、Eロイスを発動させました。


ヒドゥン:再会した幼馴染は人間不信気味だし、すごい不幸な娘や

椎名 護:はっはっはっ、すまんな


GM:Eロイスは妄念の姿と虚実崩壊です。彼女はそれらを使い本形態になって人を異空間に取りこみ、異空間の中では女神の姿になって人々を物語に参加させて、それを楽しむ生活を続けておりましたとさ。おしまい。


ヒドゥン:本形態ってのが引っ掛かって夢野ちゃん起源のRBだと思ってたわ

GM:RBではなかったのです。(GMがRBという存在をうまく理解できてないからね)

椎名 護:「……そうか」どうするかな

GM:女神こと百合子に残された時間はそう多くありません

椎名 護:最後くらい優しくしてやろう

GM:おっ、人の心をとりもどしたのかな椎名君

ヒドゥン:もうこの娘は救えないからな


~百合子と椎名護、最後の会話~


椎名 護:「あの時に助けてあげられなくてごめんね」と隣に座ろうか。※101点ダメージ叩き出して「また来世でね」とほざいた男のセリフである

GM:百合子はあなたのことをじっと見つめています

椎名 護:「……また会えたら……前みたいに一緒に話したり、遊んだりできるかな?」と声をかけますが。※達成値100の攻撃をたたき込み非情なことを吐いた男のセリフである

女神様:「まえ、みたい、に……? げ、現実にもどるってこと……? そんなの、やだよ……」

椎名 護:「覚えてない? 例えば小2の時にさぁ……」と当時の一緒にいて楽しかった話を共有しよう。幼馴染なら一緒に動物園とか行ってるだろ、さすがに。……行ってろ、そんな子供時代よ、あれ

女神様:「うん……お、おぼえてるよ……らいおんさんが…ちょっとこわくて……うさぎさん、かわい……ううっ」


 女神は苦しそうに呻き、身を捩っています。


椎名 護:「(クスッと笑い) うさぎさん……いっしょにだっこしたなぁ。現実がすべて非情なわけじゃない。あの時のことは、僕の今をこうして、支え続けている」

女神様:「うん……たのしかったね……たのしいときも、あったね。ジョーくん……おねがいがあるの……」


~女神様のお願い~


 ひとときだけ、楽しかった現実のことを思い出した女神様。

 椎名君にお願いをします。


椎名 護:「何かな?」

女神様:「パパとママにもう喧嘩しないでって言って……? またみんなで一緒に暮らそうよって説得してくれないかな……」

椎名 護:「……分かった。約束しよう。……そうか。そうだよな。うん。」多分遊園地とかいった頃は両親も仲良かったのでしょう

GM:椎名君が約束してくれたので、女神は少し嬉しそうな表情になります

椎名 護:「僕から伝えて、説得する」

女神様:「ありがとね……でも、ごめんね、ジョーくん」

椎名 護:「ん?どうしたのかな?」

女神様:「そう言ってくれて、嬉し、いハズなのに……何も感じないの。もっともっと面白い本を読みたいなって、それしか……」

椎名 護:「……そうだよな……そうなんだよなぁ……ゆりちゃんが悪いわけじゃないんだけどな……次は、この気持ちを共有したいよな……」

椎名 護:(ジャームだもんな、これはどうすることもできないな)

百合子:「だから……しあわせに、なってね、ジョーくん。お、おもしろいお話しは……みんな最後は、しあわせになるの。ばいばい、またね」

椎名 護:「うん。またね。その時はまたいっしょに」


GM:それだけ言うと、百合子は力を失って、目を閉じました。


椎名 護:「……やりきれないものですね」


GM:その姿は本に戻り、砕け散ります。残ったのは文字通りの紙屑ですね。この本が人を飲み込むことはもうないでしょう。


椎名 護:さらさらと手からこぼれていく本を唖然と眺めながらため息をつきます

ヒドゥン:結局どっちが本体だったんだか……


阿東一価:「……終わりました?」

椎名 護:「……ああ、すみません。待たせましたね」

阿東一価:「いえ、供養は大事です。積本でも、死者でも」

椎名 護:「……ええ」

椎名 護:(死者の怨念がそのまま RB とかになっても困るしな)

阿東一価:リアリストォ!!

GM:椎名君の心は鋼製なの!?

椎名 護:そういう言葉で自分をだましていかないと、この場で泣き出すしかない

GM:なんと……

阿東一価:あー

GM:やせ我慢でしたか……


椎名 護:(いまのぼくはそう思うしかない。ないんだ)


 本に戻ったのは、椎名君が苦しまないように、最後の力を振り絞った百合子の気遣い……だったかもしれません。

 これで、PC3の物語は終わりです。

 次回は、エンディング2『小林茉莉の結末』です。


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