第7話 頼んだ

 あ!

 ほれ!

 見たで!

 間違いない!




 ないはずや。

 見たしな。

 今のは、せやろ。

 老眼に乱視やけど。




 ……ホンマか?






「怒るなよ」


 優しゅーう、そーっと触った。


 猫は寝ころんだまま。

 わし、手を置いたままじっと待った。






 ポコっ。






 ……動いた。






 わしには子供が二人おる。

 娘が腹におる時、嫁はんは「触ってみ」てよう言うた。息子が腹におる時も「蹴ったで」てわしの手を腹に当てさせた。ほんで「元気にしとったのに」て首傾げて「あんたのお父ちゃんやで」て腹に言うて「お父ちゃん、嫌われてるわ」てわろとった。


 わし、動いてる腹、一回も触ったことなかった。






 ポコって手の平になんか。

 何や、感触が。


 腹が、生きとるみたいに。




 生きとるんや。




 腹ふくれとる思たら――――おる!






 何や。何やこの、これは。いきなりどないしたんや。ずうっと探して、一匹もおらんかったんやぞ。

 おい、あくびして首掻いてお前、ちぃとは異変を感じひんのか、わしのこのドクドクと高鳴りか高血圧か。

 そないのんびりして、わし一人でこの気持ちどない処理すんねん。






 お前、母ちゃんやったんかいな!









 無理やりはアカン。

 その気があったらでかまへんからて、わし、頼んだ。

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