第8話 止まった

 お前は幸せそうや。うまいこと生きていけとるんやろ。

 わしんとこに納まるようなタマやない。


 しゃあけど、お腹の子おらはどうや。

 何匹入っとるんか知らんけんど。

 三匹くらいか。どや、当たっとるか。


 あんな。




 そのな。




 もしもやで、ケンカも弱あて要領も悪かったら、外でやってくんはむつかしよな。

 いや、もしもの話や。




 もしもそんなんが生まれよったら、わしにくれへんか――









 言うて頼んだけど。


 通りかかったカップルに「かわいー」て撫でられて、ついて行って。

 毎日ここら散歩してます言うようなじいさんに寄って行って、いりこか何かもろて。

 わしの足にスリスリしに来た思たら、その辺にまたゴロンて寝て。


 微塵も通じた気がせえへん。


 そらそうやわな。

 猫に人間の言葉が分かる訳あらへん。

 わしも猫の言葉なんか分からへん。


 また来よ。

 思て昨日、帰ってん。











 おらん。











 どこや。











 あ、来よった!


 来よったがな!


 またのんびり歩いてからに。わしのこと覚えてるか。昨日の今日や、猫は忘れる言うたかて、なんぼなんでも覚えとるか。にゃ~言うてそんなとこでくねくねしてんと、早よう来いの。今日はな、ジャーキー持って来たったで。美味いやっちゃ。いや猫用やからわしは食うてへんけど。今、出したる……









 わし、止まった。

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