第6話 じっと見た

 ビビらせんよう。

 猫なで声で優しゅう。

「怖ないど」


 やっと見つけた猫や、気ぃ使つこて。

 メンチ切ってる思われたら逃げるんちゃうかて、目ぇ逸らして。


 せやのに。


 何や。




 何や、お前。




 我慢できんとちらっと見たときには、猫は目の前やった。


 坊さんが屁を――


 て、頭に浮かびきらんうちにさっさと寄って来よって、わしの足に体こすりつけて。

 ケツ向けて座りよった。




 慣れ過ぎやろが。




 お前、野良やろ。

 野良は気ぃ張っとるもんやろ。

 初めてうた人間に後ろ見せてどないすんねん。

 わしが怖い奴やったら、えげつないど。






 わしを……信用しとんのか?






 背中、撫でてみよか。


 逃げへん。

 毛ぇ、らこいな。


 頭も、いけるか。


 目ぇ細めよった。

 そないな顔されたらお前――


 よっしゃ、ここ掻いたろ。

 ここか。

 ここやろ。せやろ、な、猫はここや。

 ほおか、気持ええか。ほおか。

 何や、こっちもか。よっしゃ、よっしゃ。

 どうや。

 ほおか。




 満足したんか、ごろんてなって伸びし出した。

 またえらい気持ちよさそうに。


 お前、幸せなんやなぁ。


 こんだけ慣れとるいうことは、餌もろとるんやろな。

 見てみぃ、太ってまるまる――




 ん?




 老眼きつなってもて、いやけど、何や今……






 わし、じっと見た。

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