19:「ねぇ~っ、アナタ♡ 私の処女、貰ってくださいね♡ 」

 「ほんとぉ? ウレシイ~~~~っ! もう、お姉さんうれしくなっちゃったじゃなぁい♡ 仕方ないから、ご褒美あげなくっちゃ♡ うふふ、ン……ぷちゅっ♡」

 エッチにキスされたのとは反対側の頬を、モモさんにくちづけされてしまった。

 「うっ……!? ちょっと、モモさん、それはっ!?」

 「ええ~~いいじゃない? だってぇ、エッチちゃんと別に、つきあってるってわけじゃないんでしょぉ? 一緒に住んでるから、ガマンできなくてヤっちゃっただけなんでしょぉ~~~っ?」

 「……後半は違いますけど、前半はそうです」

 「だったらぁ、君が私とチュ~~~ってしたってぇ、ぜんぜん問題ないわけよねぇ? フフフっ、んじゃぁっ、お姉さんとチューしちゃおうぜ? ほら、キスで遊ぼう♡ ンふふっ……ちゅっ、クチュちゅっ……♡」

 「うぁっ……!?」

 モモさんのくちびるが、やわらかく触れる。俺は、緊張に目をつぶった。

 「んンっ、ちゅっ、ちゅぅぅぅぅっ……♡ はぁぁ、しょうねぇん♡ ンむぅ、ン、はぁーっ、ぁン♡ ちゅるっ、ニュちゅぢゅぅ♡」

 いつの間にか、モモさんは俺の片手をぎゅっと握ってきた。その上、脚を伸ばして、俺の脚に絡ませて遊んでいる。完全に、彼女のおもちゃだ。やばい。宴会ははじまったばっかりなのに、早くもこれとは……!

 「ちょっと、モモさん、そんなに……!」

 「いいじゃん、いいじゃーんっ、少年だってまんざらでもないんでしょう? 顔真っ赤にしちゃってさぁっ、アハハはははっ! かーわいいっ♡ ンちゅっ、ちゅっ……♡」

 モモさんが俺の頬にキスする最中、今度はエッチも俺に迫る。

 「エッチです♡ 私も、ごいっしょにキスご奉仕させてくださぁいっ……♡ ンっ……ぷはっ、ぁむ、ぺろぺろぺろォん♡」

 「え、エッチまでキス……だと!? んぐぐくっ……!」

 俺の左右両サイドで、エッチとモモさんがはぁはぁ息をあらげながら、ほっぺにキスしてくる。まさか、二人同時だなんて……現実味がなく、俺は呆然とされるがままになる。

 「ンふっ、しょうねーんっ、かわいいぞ♡ んちゅっ、ぁむ……はぁーっ、んっ……♡」

 「えっちれすぅ♡ 私のおクチご奉仕、いかがですかぁ? 貴方が満足されるまで……んチュッ、ぬぢゅチュゥ……いくらでもご奉仕しますぅ♡ うふふっ、んン……♡」

 「ううっ、か、勘弁してくださいっ……!」

 「え~っ、何よ少年、こんなかわいい女の子二人にキスされて、何が気に入らないのかな? ちゅっ、クチュちゅ……はぁン♡」

 お、「女の子」って……。

 たぶんモモさんは三十代だと思うんだけど、「子」をつけていいんだろうか?

 「いえっ、気に入らないというか……そういうことじゃなくっ」

 「エッチです。ンちゅっ、チュッチュッ……はぁっ、ンぢゅ♡ きっと、照れていらっしゃるだけですよね♡ ねぇ~~っ? アナタ♡」

 エッチは俺の肩に手を置き、胸を押し付けながらキスしてきた。や、やばい……。エッチ一人だけだって、俺には手に負えないくらいの刺激なのに。それが両側からとか……っ! 刺激が二倍どころか、二乗になっている気がする。

 まずいっ……まずいまずいまずい! こんなふしだらなことをしに、モモさん家に来たわけじゃあ……!

 俺の脳細胞はフル回転し、やがて起死回生の言い訳を思いついた。

 「ちょ、ちょっと待ってください二人とも! 鍋食わなくていいの? 鍋!」

 美味しそうな匂いを放つ鍋を見て、二人はハッと我に返ったようだった。

 「エッチですぅ♡ エヘヘヘっ……そうですね、せっかくですので、いただきますぅっ」

 「そうよねー、やっぱり美味しいうちに食べないと。さぁ、じゃんじゃん食べてね!」

 女性陣二名は、とたんにガツガツゴクゴクやり始めた。

 「ふぅ、助かった……」

 と俺は胸をなでおろした。

 

 彼女たちの食欲によって、鍋はきれいに空になった。俺だって、運動部だしけっこう食べるほうなんだけど、まったく敵わなかったな。

 「ふ、二人ともよく食べますね。健康的でいいな」

 「そうかな? このくらいで音を上げてちゃダメよ、男の子なんだし。はい、次はお菓子ね」

 モモさんはビスケット、チョコレートスティック、ポテトチップス等をいくつか広げた。酒はまだぜんぜん抜けておらず、顔は真っ赤なままで、

 「さてさてぇ~、お話でもしましょうかぁ。ああ~~いいわねぇ~~~っ! 家に話し相手がいるって! いっつも仕事から帰ってきて、だぁれもいないと、精神的にクるのよねぇ……」

 モモさんの顔に、どよーんと影が差したように見えた。

 「た、確かに、それはつらいかもですね」

 「そうよぉ? 君だって、少し前まで一人暮らしだったよね? ならこのつらさ、分かるでしょ!?」

 「まぁ、分かりますね」

 「それが……それが、今は何よぉっ!」

 「はっ!?」

 ポテチをお酒で飲み下し、モモさんは吠えた。なんで急に怒り出したんだ? 酒飲みの感情の起伏は激しすぎる……。

 「こ~~んなかわいい女の子とぉ? 一つ屋根の下で同棲ですってぇ!? 親戚とはいえ……ひっく! 許せないわねぇ、もぉ~~っ、このこのこの!」

 「うわっ、ちょっ、やめ!?」

 モモさんは俺のこめかみの辺りをぐりぐりやり始めた。

 「それでそれで? どこまで行ったの!?」

 「……? 何がですか」

 「少年とエッチちゃんはどこまで進んでるのって話よぉっ。どうせもう、行き着くところまで行き着いちゃっているんでしょぉ……? 毎晩毎晩、大盛り上がりね!?」

 「そ、そんなわけっ……!」

 俺は少々うつむいた。エッチはエッチで、お酒をあおって会話に参加せず、助け舟を出してもくれなかった。まぁエッチがしゃべると、逆効果になりそうだからいいけど……。

 「べ、別に……エッチはすぐキスするような文化なんで、キスはしていますけど。それ以上のことは何もないんですよっ!」

 「ひくっ……! ほんとぉ? ウソついたらチョッキンってしちゃうぞぉ?」

 「どこをですかっ! ……ほんとですよ、別にウソなんかついてませんって」

 「ふ~~んっ……? ならいいけどさ」

 モモさんはふぅっと息を吐いた。ものすごく酒臭い……。完全に出来上がってるな。

 「ねぇねぇエッチちゃぁん。彼こんなこと言ってるけどさぁ、ほんとぉ? ぶっちゃけエッチちゃんとエッチしちゃったりしてないの?」

 「?! なんて下品な言葉をっ……!」

 「エッチれすぅ♡ えぇ、私たち、愛し合っていますけどぉっ……んん、ヒクっ……してるのはぁ、キスだけですよぉ♡ いつかは、それ以上になることも、あるかもですが……ンふっ、うふふふふふ♡ 私はまだ処女ですぅ♡ 彼が心から望んだ時に、私の処女を奪っていただくこととなる……れしょうねっ……♡ ねぇ~っ、アナタ♡ 私の処女、貰ってくださいね♡ ンっ、ごくごくっ……ひくっ、ヒックんっ! うえぇっ、失礼……ひくぅっ……いっ、いい今の彼は……とっても誠実でぇっ、ウブなぁっ、男子っ高校生ですからねぇっ♡ そのようなことは、まらぁ、望んでらっしゃらないんですよぉ……ンふふふ♡」

 「ふぅん……? 要するに少年がチキン君ってことね?!」

 「ま、間違っちゃいないけど……。ええ、俺はチキンですよ。チキンでけっこうです」

 「へへへへへっ、ほんとぉ。じゃ、童貞処女カップルなんだぁ? ふーんっ……」

 モモさんは、俺を値踏みするようにじろじろ眺めた。なんだか、舐めるような視線で怖い……。

 「少年ってさー、穢れを知らない感じでカワイイわよねぇ……♡」

 「うおっ!?」

 モモさんは、俺を抱き枕のように引き寄せた。片腕でビールをあおりながら……。まさに酒池肉林って感じだ。

 「ンふふっ……♡ んぐ、ごくごくごくっ……っぷはぁっ! でもさでもさー。逆に言うと、少年はキスはして欲しいってことでしょ?」

 「エッチれすっ! えぇ、その通りですぅ。他者を癒して、差し上げるようなぁ……ンっくっ……優し~いキスの仕方をぉ、彼は欲しておりましたぁ♡ したがってれすねっ……はふっ、んんン~~~っ……私が、教えて差し上げたのれすよぉ♡ ……あぁっ、あの夜のことは、今でも忘れられましぇん……♡」

 エッチは祈るように両手を握り、ピンク色の瞳を輝かせた。

 「恥ずかしいのに、一生けんめぇ、キスしてくらさった、アナタ……♡ あぁ、本当にステキでしたねぇ~~っ♡」

 「くぅーっ! いいわねぇ、若いってうらやましいっ!」

 酒を煽りつつ、モモさんはうなった。

 「ねぇねぇ、少年っ! どーせ君だってさぁ、可愛い女の子とチューしたくてしたくてっ、たまらないんでしょっ♡ ね、どーせそうでしょぉ? このぉっ、ムッツリすけべぇ♡」

 「っ……!?」

 ぐりぐりっ、と、頬をこすりつけてくる。ものすごく答えづらい……。

 「まぁ……俺だって男ですから、否定はしませんが……」

 「やっぱりぃ♡ 若いわねぇ、男子高校生はっ♡ ンフフ、んぐんぐんぐっ……。ねぇねぇじゃあさぁ、お姉さんとキスしちゃおーぜ? ほら、ほらっ」

 「ええええっ!?」

 また、話が元に戻ってしまったぞ……?

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