20:「私みたいなおばさんでも、君をドキドキさせられるのね♡」

 「ねぇねぇ、お姉さんとぉ、チューしよーよぉ♡ 別に、エッチちゃんと付き合ってないんだったらぁ、いいじゃん? いいじゃんっ、ね? ひっくっ……ふへへへへへっ♡」

 モモさんの真っ赤になった綺麗な顔が、だんだんと近づいてくる。

 「く、くぉぉっ……!?」

 「あ~~~~っ、本気チューするなんて何年ぶりかしらぁ? 私を振ったあのバカ男以来だから……五年ぶり? きゃぁ~~~~っ、ちょぉ久しぶりぃ♡」

 完全に、もうキスする気でいるモモさん。ど、どうしたらいいんだ。 

 「エッチれすぅ。あのれすねっ、アナタぁ♡ モモさんの心の中にぃ、寂しさを発見いたしましたよぉっ……ひくっ、ヒクゥ! かっ彼女にぃ、しぇっぷんほうし《キスサービス》して差し上げれば、やはりぃ~っ、相当な他者奉仕となっちぃますよぉ……♡ どうしますっ、アナタぁ♡」

 「ま、まじでか……。うぅん、仕方ないな。モモさんのためならっ……!」

 できれば、もうちょっと酒臭くない時がよかったけど……わがままを言っている場合じゃないか。

 モモさんは一人暮らしだし、誰もいなくて寂しいのだろう。それは、放ってはおけない。

 「うふふふっ、しゃしゅが、貴方は私がお見受けしたとーりのお方でしゅぅっ……♡」

 「ねぇほらあ、二人で何はなしてるの? 早くお姉さんにチューしてよぉ、しょうねぇん♡ それとも、私からしてあげようか? ン~~~~~~っ……♡」

 「わ、分かりました。つつしんでキスをお受けしますっ……! んんんっ!?」

 モモさんは、勢いよく俺にとびついてきた。腕が背中に回され、くちびるが奪われる。もはや、「食いつかれる」と言ったほうがいいかもしれない。

 「ぁむ、ンちゅぅ~~~~~っ……♡ はぁっ、ンぶ、んぷっ、じゅるるるるるるっ……!」

 「うぷっ……?!」

 は、激しい……! モモさんは、付き合ってる男性がいないからか、相当な欲求不満のようだ。

 「やぁンっ♡ しょうねーん、ステキだぞぉ♡ お姉さんがー、もっとえっちぃキスしてあげるわよ♡ んぷっ、くちゅちゅチュ……はぁーっ、はぁっ、ンにゅ、れろれろれろれろ……♡」

 「んんっ、も、モモさんっ……!?」

 彼女のくちびるは強烈に酒臭かったけど、同時に濃厚な甘い味がした。

 「はふっ、んん♡ 少年のくちびるいいなぁ~っ、お姉さんクラクラしちゃいそ♡ ンむニュゥぅぅぅぅぅぅっ……♡ ぷちゅっ、にちゅにちゅヂュるりゅぅ♡」

 「うぅ、モモさんっ……!?」

 俺とモモさんがキスしているのを、エッチが横から、興味津々といった体で見ている。「あらっ……♡」と、口に両手を当てていた。見世物じゃないっていうのに……。

 「こらこらぁ、しょうねん? キスしてるときにぃ、余所見しちゃダメよ♡ お姉さんの目ぇ見てくれなきゃ、ヤーよぉ……っ♡ ンふふっ、ニュルるるるるるっ……くちゅくちゅジュククっ♡ んん~~~~~っ……ふぁっ、ヂュるるぷチュゥ♡」

 「ご、ごめんなさいっ。モモさんっ……! んぷっ、ん!」

 俺のほうも、モモさんを抱きしめ返した。彼女の体が、ピクンっと震える。

 そ、そうだ。これはあくまで、モモさんへの奉仕活動なんだ。モモさんが、満足できるようにしなくっちゃ……! 俺は、積極的にくちびるを動かしにいく。

 「はむっ、ン……ぴちゅぴちゅ、ヌチュちゅズチュっ……はぁはぁっ、ァ♡ にちゅっ、チュパチュパ、ぬチュズちゅぅっ……♡ ンはっ、しょうねぇん……キス、すっごい上手じゃぁん♡ あ、アっ♡ すっご……ヤぁっ、ンむっ、クチュっ……ちゅっ♡ ちゅっ♡」

 「ど、どうも……。んむっ、はぷっ……!」

 モモさんの目は細くなって、とろんとタレ目になってきた。エッチはもとよりかなりのタレ目だけど、それと同じくらいだ。

 「んんっ……ン♡ ぁはっ、やん♡ にチュっ、ジュぷぷぷぷぷっ……ン~~~~~っ……ぢゅパァっ……♡ あ、お姉さんわかったぁ♡ エッチちゃんとチューしまくってるから、上手なんでしょぉ♡ ……ンぁ♡ ちゅっ……チュぷ、れろれろれろ♡」

 「そ、そんな、ことはっ……!」

 ホントは、そんなことあるんだけど。面倒だから、ウソをついておいた。

 「ぅむっ、チュぽちゅぽちゅぽっ……きゃ♡ しょうねんのおクチ、ステキぃ♡ ふぁ~~っ、ンちゅっ、にちゅにちゅにちゅっ、ズちゅぅぅぅっはぅンッ♡ 別にぃ、隠さなくったっていいじゃなぁい♡ ン~~~~~っ……♡ はぁっ♡」

 「はぁ、はぁっ……!」

 ずっとくちびるを重ねていたので、俺もモモさんも息が荒い。でも止めるつもりはないのか、モモさんはすぐに再キスしてきた。

 「はぁ~~~~っ……ン♡ ニュぢゅっ、ンちゅ、れるれろれろれる♡ ハァっ……♡ しょうねん、しょうねぇんっ♡」

 「んン、モモさん、モモさんっ……!」

 名前を呼び合いながら、キスする。

 エッチが言うには、接吻奉仕キスサービスとは、相手へ愛情を送ることだ。だからこそ、その相手を助けることにつながる。

 エッチみたいに万物への愛ユニバーサルラブなんて、そこまで悟りきるのは難しいけど……今の俺にできることをしようと、心の中で、モモさんへの愛情をこめる。

 「ンふぁ、あンぅっ……♡ ああ、しょうねぇん……なんか、君とチューしてると、お姉さんほっとするよぅ♡ にちゅっ、ンちゅぅっ……はぁ~っ、じゅるじゅる、じゅるりゅっ♡」

 「お、俺は……ど、ドキドキしてますっ、ンぷっ、ぷちゅっ……!」

 その瞬間、モモさんの体がくねっと動いた。俺の背中に回された手が、さすさすとなでてくる。

 「ンふふっ、ウレシイなぁ♡ 私みたいなおばさんでも、君をドキドキさせられるのね♡ あむ、ンちゅっ、ニュルりゅぢゅっ……ふぁ、ァンっ♡ にちゅっ、クチュにちゅにちゅにちゅ♡」

 「べ……別に、おばさんなんかじゃないですよ。モモさんは、とても……き、綺麗だと思いますっ! あむっ、ちゅるっ……!」

 「やァんっ♡ ありがとしょうねぇん♡ ほんとウレシイよっ、自信ついちゃうなぁっ♡ じゃ、いっぱいご褒美あげなきゃぁ♡ ん~~~~~~~っ……チュパッ、れるれるれる、ふぁっ、ちゅぷっジュル♡ ……んっく、ごくごくごくっ」

 俺の褒め殺しで気分が良くなったのか、モモさんはまたビールをあおった。ただし缶ではなく、瓶から直接……。すげぇ。こんな酒癖悪い大人にはならないでおこう。

 「ふぁぁっ……♡ うぅ~~~ん……アリャ? お酒なくなっちゃったねぇ? まだあるからさぁ、お姉さんちょっととってくるよぉ。アハハハハハっ♡」

 何がおかしいのか、ケラケラ大笑いしつつモモさんは部屋を出た。

 俺はエッチに向き直り、

 「……ねえエッチ。今ので、だいたい接吻奉仕キスサービスできました?」

 エッチは、少し酒が抜けてきたのか、ちゃんとしたしゃべり方にもどっている。

 「私はエッチです。まだ少々足りないようですね。いいところまで行きましたが、中断してしまったようです。もう少し、愛情表現をして差し上げなければ……もし望まれるなら、お手伝いさせていただきますが?」

 「お手伝い?」

 俺とモモさんがキスするのを、どうやって手伝うというのだろう?

 「エッチです。まぁ見ていてください」

 やがて、モモさんが帰ってきた。ビール瓶の先を開け、ごくごくと煽る。顔は赤いが、まだまだ飲めるらしい。

 「エッチですぅ♡ ねぇねぇアナタぁ、お願いがあるんですけどぉ♡」

 ――と、急にエッチがわざとらしく言った。

 「な、なに?」

 「エッチですっ♡ 私、モモさんが用意してくださったお菓子が食べたいですぅ♡ アナタ、私に食べさせてくださいませんか? おクチで、ちょ・く・せ・つ♡ ンふふふふっ……♡」

 「ええええ!?」

 それっていわゆる……口移しってこと!?

 「おっ、エッチちゃん攻めるねぇっ! うぃ~~~~っ、ひっくっ」

 「エッチです、それほどでもありません♡ ね、アナタ♡ お願いしますぅっ……♡」

 演技だか本気だか分からない、迫真の甘え声。四つんばいになって、エッチはだんだんと俺に迫ってくる。

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