11:お風呂でご奉仕する宇宙人
「エッチです。お背中お流ししますね」
エッチは、風呂場の戸をガラッと開けて、俺の後ろに座り込んだ。
「っ!? ちょ、ちょっと……! エッチさん、それはまずいですよ色々っ!」
思わず「さん」づけになってしまう。毎日のようにキスをせがまれているとはいえ、一緒にお風呂に入るとか……それはまた、別の話だろう。俺、いま裸なのに……女の子がすぐ後ろにいるなんて、童貞の俺には刺激が強すぎる。
「エッチです。心配無用です。私は貴方にどんなことでもしてあげたいんですから……♡」
「そ、そういうことじゃなくってっ! 俺が恥ずかしいんですっ」
「エッチです。慣れれば、恥ずかしくなくなりますよ♡ すぐに、快感へと変わります♡」
「快感とか言わないでくださいっ! ただでさえ、ギリギリの会話を繰り広げてるっていうのに、もう超えちゃいけないラインを超えちゃいますよ!?」
「エッチです。貴方に、『してはいけない』ことなどございません。さぁ、一線を超えちゃいましょうか? ねぇ、アナタ……♡」
すっ……と、エッチがタオルを俺の背中に押し当てる。ごしごし、ごしごし……と丁寧に繊細に拭いてくれた。
「うっ……。ふ、ふぅ~っ……」
たしかに、けっこう気持ちいいかも。いやらしくない意味で……。
「エッチです。どうですかアナタ? だんだん、快感になってきましたか?」
「だから……きわどい言葉を使わないでくださいってばっ」
「ふふふっ、そう照れなくてもよろしいですのに……♡ 私は、貴方にご奉仕がしたくて、
エッチは、あごを俺の肩にもたせかけるようにして、耳元にそっとささやいた。体がぞくっとする。ついつい、言うことを聞いてしまう。……まずい。まずいぞこのままじゃ。
「うふふふ、貴方のお肌、すべすべ……♡ 塵一つないよう、綺麗にして差し上げますね」
するるるっ……と、エッチの手が俺の尻や脚に走る。あまりの細やかさに、俺は飛び上がった。
「うひぃぃぃぃぃっ!?」
「あらあら、貴方のかわいいお尻、キュぅ~ッて♡ 締まっちゃっていますよ♡ はぁ、ステキ……でも、ほらほら、もっとリラックスしてくださいね♡ 腋の下も洗って差し上げますけれど、私に身をゆだねて、キレイになるのを楽しんでくださいね♡」
すりすり、すりすり……と、エッチの手が俺の脇腹や、腋の下を優しくなでてくる。
「んっ、く……!?」
大笑いしてしまうほどではない。けど、絶妙な刺激がたまらない……。
「ぅっぅふっ……うぐぁぁぁっ……!?」
「ふふふ、悶えるアナタも、とってもステキぃっ……♡ ねぇアナタぁ、次は前ですよぉ~♡ さ、おカラダくるってしてください♡」
「いやいやいや、前は絶対まずいですって! 『背中を流す』だけって言ってたじゃないですかっ」
「エッチです。『背中』というのは言葉の綾ですよ、アナタ♡」
「日本語使いこなしすぎでしょ!?」
異星人なのに……。
エッチは、俺の前にくるっと回り込んだ。
彼女は、下着姿だった。
「ぶっ……!?」
思わず、鼻血を吹きそうになる。俺は、鼻を押さえた。
エッチの下着は、上下とも真っ赤なハートマーク型だ。なんてわかりやすく、かつ過激な……!
「エッチです。どうされたのですかアナタ? そんなにお顔を真っ赤にされて。もしかして、私のあられもない姿に、ムラムラしてしまわれたのですか?」
「だからそういう言葉を使わないでっ!」
「あらあら、そんなに横を向かなくても。わたし寂しいですよぉ……っ♡ ネェ、私の目を見つめてください……ねっ? ほらほらっ、ア・ナ・タぁ♡」
つんつん、つんつん、とほっぺたをつつかれる。くそっ……! やむを得ず、俺は前を向いた。
「エッチです。不思議ですね、どうしてそこまで恥じらわれているのでしょう。イクミさんとは、裸で抱き合ってキスまでしておられましたのに」
「そんなシーンまで見てたんですか!?」
「私はエッチです。常に、貴方を見守っていますよ。トイレの時も、お風呂の時も、寝ている時も……デスっ♡ これを、貴方に対する侵害行為とは考えないでくださいね。なぜなら、私たちは貴方のことを、自分自身の一部として捉えているからです」
「そ、そうですか。ウン……」
喜ぶべきか、嫌がるべきか、微妙なところだった。
「話を戻すけど……まぁ、だってイクミははっきり言ってまだガキだし。体もぺったんこですからね」
本人の前で、これは言えないな……。なぁんてことを言っているとイクミ乱入フラグが立ったりもするわけだが……さすがに風呂場をぶち抜いてイクミが入ってくるなんてことはもちろんなかった。
「それに比べて、エッチさんは、その……なんというか、まぁ……お、大人っぽい、ですよね?」
エッチの胸部は……なんか、マスクメロンみたいな感じだ。イクミのそれとは月とすっぽんのような差がある。
するとエッチは、恍惚として自分の胸を抱いた。
「はぁぁっ……♡ アナタにエッチな目で見られていると思うと、ぞくぞくぅってしちゃいますぅ♡」
「べ、別にエッチな目でなんて……っ! エッチは、あなたの名前でしょ!」
「そんなことよりアナタぁ♡ お体、キレイキレイにさせてくださいね。じっとしててくださいっ……ほら、ふきふき、ふきふき、ふきふき……っ♡ ウフフ♡ あぁっ……いつ見ても、たくましいお体です♡ 男らしくって、とってもステキですよ♡」
「んっ、くぅぅ……!?」
胸筋のあたりを、エッチの素手がスルスル、スルスルと通り抜けた。というか、いつの間にタオルを捨てて素手で拭いていたんだ……?
「ほらほら、じっとしててください、アナタ♡ キレイにしてさしあげられないではないですか。ほ~らっ……お腹、腰……もも、すね、足先……やぁン♡ 貴方の物理的肉体って、とってもステキですぅ♡」
「くぁっ……あ、あ、あ……っ!」
エッチの素手で体中を洗われ、もとい弄ばれ、俺はエクトプラズムのようなものを口から吐き出す。
俺の体は泡まみれにされた後、温水シャワーをかけられた。晴れて、体洗い終了だ。なんでこんなに疲れているんだか知らないが……。
「い、いちおうすっきりはしましたよ。エッチ、ありがとうございます。じゃ、またあとで」
「エッチです。何をおっしゃっているのですか、アナタ? 私は、まだまだ貴方にご奉仕して差し上げるつもりですのに……んふふふっ」
エッチは艶っぽく笑ってみせる。
そして、自分から湯船に入った。いつの間にか、下着は消え失せている。
ということはつまり……裸!? そ、そんな、とても見ていられない……っ!
「エッチです。どうしたのですか、アナタ。そんなにぎゅっと目をつぶって。泡の洗い残しでもございましたか? ともかく、私が異星人クッションになりますので、どうぞ♡ ご遠慮なく、私の腰の上に座ってください♡」
エッチは、両腕を広げて歓迎のポーズをとった。もちろん、直視できるわけない。俺は、風呂場の天井を仰いでしまう。
「そそそそそっ、そんなことできるわけっ! ほら、エッチに悪いですしっ」
「エッチです。宇宙に、善と悪の区別はございません。貴方のすべての行動は、愛されるべきものなのです。さぁ、どうぞ、ご遠慮なんて水臭いことはなさらずに♡ 私たち、愛し合っている仲ではないですか……♡」
エッチは、俺の手をギュッギュッと、子供のように引っ張った。
「うぅ……! く、くそっ……しょうがないっ!」
「あぁ、嬉しいっ! 私の愛を感じてくださったのですね♡ さっ、どうぞ♡ はやくはやくぅ♡」
おずおずと湯船に入る。するとエッチは、後ろから俺を抱きとめた。
むにゅっ……。
「ひえぇ……っ!?」
「あら? どうしたんですかアナタ。お体がガチガチに固くなっていますよ。ウフフフ、本当に可愛い方……♡」
「え、エッチ、分かっててやってるでしょう!?」
「エッチです。ええ、貴方が私を愛してくださるのは、十分わかっていますよ。もっとお返しをしなければなりませんね。アナタ……大好きですっ♡」
エッチの腕が、後ろから俺をがっしり捕まえる。
「ほら、全身ベッドですよ? 心行くまで、私といっしょにお風呂を堪能しましょうね♡」
「っ……!?」
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