第24話進化

 アイアンゴーレムを倒しレベルが52になった瞬間に体が作り替えられていく、体が激しい痛みに襲われる最中ミラの心配そうな声が聞こえる。


「大丈夫か! 耐えろ。」


「グァ………グ……アアアアー」


 今まで経験したこともないような激痛の最中に何とか魔力の循環をしようとコントロールしようとするが魔力を循環させようとするとすぐに激しい痛みで集中力は乱されうまく循環出来ない。


「ダメか! ドラファヒール」


 ミラの小さな手は光輝きオレの体を覆っていく、少しだけ痛みが引いていくがそれでも激痛なのは変わらなかった。

 遅れてリーズとアイリスが駆けつけたのか声が聞こえる。


「ミラ様! リクトさんはどうなされたのですか!?」


「種族進化が始まってしまったようだ」


 リーズの表情は驚きに包まれる、オレは激痛で目を微かに開けて確認する。


「そんな、速すぎではありませんか! 体も出来ていないでしょう!?」


「そのはず! それに戦闘の後じゃ

 体力は消耗している………非常に危ない」


「しっかりしてください! リクトさん。まだ一緒にいたいです」


 アイリスが咽び泣きながら心配そうに顔を覗き込んでいるのが感覚的に分かる、涙が顔に落ちてくるのが分かった。


「し……心配す…ん………な」


 オレは掠れた声でだが何とか思いを伝えることができた、だがオレの体には揺れを感知する。

 異変に気付いたのかミラとリーズは周りを見ている、周りには見たこともないような魔物や先程のアイアンゴーレムが複数体オレたちグループを囲むように現れる。


「リーズ、リクトを見ていろ」


「畏まりました。ミラ様」


 ミラからは激しい魔力の波動を感じる、ミラの小さな体を覆うようなどんな闇より深いオーラが出現する。


「待っていろ。リクト、すぐに終わる」


 いつものような雰囲気など存在などせずまったくの別人に見えてしまう。

 アイリスもオレ同様初めて見るミラの雰囲気に畏怖し恐怖していた。


「闇より派生せし力

 暗黒の魔獣よ、我の前に立つ愚者を抹消せよ

 闇の力をもって愚者を喰い散らかせ闇喰いダークネス・イーター」


 ミラを覆っていた漆黒のオーラはオレたちを囲んでいた魔物を包み隠すように移動する。

 魔物達は何が起きているのかさえ分からず漆黒の魔力によって体を喰いちぎられる、漆黒の魔力はまるで飢えた獣のように魔物達を一瞬で食い散らかしていく。

 オレをさんざん苦しめたアイアンゴーレムの鋼鉄の装甲はいとも簡単に闇に飲まれていく。


「さすがです。ですが衰えておりますね」


「あぁそろそろ鍛え直さなければな……魔法を発動せねば倒せんなど衰えるも限度ってもんがあろうに」


 おいおい、衰えていてこれだけ強いのかよ!………規格外過ぎて俺じゃどれだけ強いのかわかんねぇ~わ。

 あれ? そういえば痛みは? 気付いたら体の痛みは収まっていた。


「ミラ! 痛みが収まったぞ」


「おぉー良かったな! まったく、心配をさせてくれる」


 ミラはオレの体をペタペタしてくる。


「他に痛い所はないか? 良かったな。下手したら死んでおったぞ」


 まてまて、そんなにヤバかったのかよ!!………まぁーもう大丈夫だろう………大丈夫だよな?


「なぁ~オレって大丈夫だよな?」


「あぁー大丈夫じゃろう」


 体は作り替えられて目も良くなり、耳も良くなったような気がする、それに体からは溢れんばかりの力を感じる。

 一度ステイタスを見てみるか。



 名前 ミヤマ リクト


 称号 魔眼保持者、牛殺し、早熟せし者


 レベル 52


 HP 1281→1781

 MP 1643→2143


 ATK 721→1221

 DEF 782→1282

 INT 683→1183

 RES 719→1219

 HIT 693→1193

 SPD 895→1395


 個体名:三山 利久人

 種族:異端の半吸血鬼アウトサイド・ハーフヴァンパイア

 種族能力:恐怖支配 B 殺気凶悪化 B

 身体能力増加 A 憎悪倍加 B


 個体能力:斬撃耐性 C 打撃耐性 B→A

 短刀術 A 切断耐性 B 剣術 E


 解放能力:魔法多重起動、魔力操作


 魔物能力 ドレインタッチ 水流操作 剛力 聴覚鋭敏 糸操作

 糸強化 毒付与 毒生成 糸生成 麻痺毒付与

 自動MP回復 悪魔召還


 マジックアイテム能力 ステイタス閲覧 能力閲覧


 行使可能魔法

 初級 火炎魔法(ファイヤーボール、火種生成など)

 中級 火炎魔法(フレイムボール、フレイムサークル、フレイムランス)

 初級 大地魔法(アースアロー、アースランス、アースソード、アースウォール、アースバインド)

 中級 回復魔法(傷の治療、毒の治療)


 所持魔眼:ハイリーディングアイ

 効果、視認した物質の名称、事柄を読み取る、魔法の本質を見抜き、解読、理解

 また獲得できる情報が増えている。

 例、動きを読み取る、思考を読み取る、ただし読み取れるのは格下のみ


 上位能力:理解者

 理解した物体、魔物の特徴やスキルをコピーすることができる(一つの物体からは一つだけ、魔物のスキルも同様で一つだけ) 


 獲得能力 なし》



 やっべぇーやっとステイタスを使いこなせるようになったのにまた上がってるし………まぁー応用だから、使いこなすのには苦労しないだろう。

 しかも種族が変わってステイタスが全体に+500されているし。

 種族も新しく追加されてしまった。


「なんか種族変わってるんだけど説明してくれない?」


「あぁ~それは、種族には一定の強さになると進化するんだ。じゃがハーフヴァンパイアなんてあまり前例がなくてな、進化の条件、レベル、必要な諸々が全て分かっていない。

 私の吸血鬼ヴァンパイアという種族はレベルが300になるとぞれぞれの進化をするんじゃ」


 ミラが分かりやすく説明してくれているがあまり難しくて理解できなかった。

 あまりこっちの世界のことに詳しくないからわかんねぇー………そういえばこっちに来てずっとバタバタしてたからな。

 あまりこっちの世界のことを知る機会がなかった。


「お、おう。そうか」


「その顔は分かっておりませんね。どれだけ早熟なのかを!」


 いやいや分かっていると思うぞ。たぶん

 だってミラでさえ進化するのに300のレベルが必要だったのにオレはたった50で進化してしまった。


 待てよ………オレって凄くねぇーか。


「分かってるよ!………6分の1だからな」


「6分の1? なんです、それは?」


 数学もこっちじゃ理解されないのか!………こっちの世界はどうなっているんだ。

 教育すらしていないのか? いや魔族だからか?


「アイリスはわかんねぇーのか。暇な時に教えてやるよ」


「ありがとうごさいます」


 それにしてもあの魔物の大群は何だったんだろう、見たこともないような強そうな魔物や俺が倒すのにかなり苦労したアイアンゴーレムでさえ複数体いたあんなの俺一人なら確実に死んでいたな。


「あの大群って何だったんだ?」


「ん~、分からん。野生の魔物が群れを成すなど聞いたこともない」


 ミラは自分の魔法で倒した魔物の残骸で見つめ訝しげに考えている。

 ミラでも知らないとなるとかなりの異例なのだろう、それにしてもあの魔法は凄かったな。


「ミラのあの魔法って凄すぎね!」


「あれは私のオリジナル魔法だ、まぁー格下にしか使えんがな……使い勝手はいいと思うぞ」


 あれがオリジナルとは凄すぎて何もいえねぇ~わ。

 それにあれだけの大きな魔法を使ってもミラはMPが減った様子はないということはかなりMPがあるということになるだろう。

 オレもMPが多い方だと思ったんだけどな、まだまだなようだ。


「そっか」


「それにしてもあの残骸どうするんだ?」


「う~ん………私の亜空間魔法の中にしまっても良いが町に行くとあの魔法は目立ってしまうしの……」


 ミラはアイアンゴーレムの残骸を足でツンツンしながら言っている、貴重な素材になるんだから丁重に扱えよ。


「じゃーオレのマジックバッグに入れるか?」


「あ~そういえばあったの。それで大丈夫じゃろ」


 オレはミラが倒した魔物達の遺骸や残骸をマジックバッグにしまっていく。

 アイアンゴーレムの残骸ならば鋼鉄で出来ているからあまりグロくないが、その他の見たことも無いような魔物は肉体を持っており臓物が撒き散らされていた。

 正直触りたくもないし、見たくもない………どうしよう?


「なぁ~持って帰るやつってアイアンゴーレムだけでいいか?

 あの黒い魔物はさすがに……な」


「まぁーこれじゃ~売れんじゃろうから構わんじゃろう」


 だよな。良かった

 オレはアイアンゴーレムの残骸を集めている最中に助けた冒険者達が近付いて来た。

 両手剣の男や修道服の女や魔法使いの女の怪我はすっかり消えていた。

 どうやらミラが回復魔法を使って治してくれたみたいだな。


「助かったよ、ありがとう。あの動き、さぞや冒険者ランクが高いのでしょうね。」


「そこまで高くないよ。オレなんてBランクだしな」


 冒険者達は3人同時に笑い始める。


「ご冗談を、あの洗練された動きは最低でもAランクでしょう」


「ミラとリーズはSランクとAランクだがオレはBランクだぞ」


 冒険者達は笑うのをやめ、こちらをじっと見てくる………いやいやそんな目で見られたとしても本当なんだが。

 ギルドで渡されたギルドカードでも見せるか、オレは銀色に輝くカードを冒険者達に見せる。


「えっっ……本当にBランクですか!

 私達ですらAランクなのですよ。3人がかりでも勝てなかったアイアンゴーレムを1人で倒していたではありませんか。どんな力を使ったのですか!?」


 ん? こいつらってAランクなのか! なのにアイアンゴーレムにあれだけ手間取っていたのか!………それにあんなにボロボロになっていたし。

 Aランクの強さってどれぐらいなんだ?

 ちょっと確かめて見るか。

 オレは魔眼、ステイタス、能力閲覧の能力を使う。


 《個体名 ガムロ・バラダイン

 種族 人間

 性別 男

 年齢 26

 グムーラ街 冒険者ギルド Aランクパーティー[瞬雷の剣]リーダー

 個体能力 上級剣技(スラッシュ、三段突き、雷剣、瞬剣、鎧破壊、装甲破壊、毒剣、眠剣、痺剣、恐剣、混乱剣)

 上級能力 守護者

 仲間や物を守る時に物理防御力が上がる

 また瀕死に重傷を負っている場合攻撃力も上がる

 ステイタス平均値 800》


 《個体名 サリア・ブリーング

 種族 人間

 性別 女

 年齢 23

 グラーム街 冒険者ギルド Aランクパーティー[瞬雷の剣]メンバー

 個体能力 上級援助魔法(火、水、木、雷、氷、闇、光属性耐性付与

 防御力上昇、攻撃力上昇、魔法防御力上昇、魔法攻撃力上昇)

 上級能力 援助者

 援助系統魔法の消費MPがかなり減る

 また効果が上昇する

 ステイタス平均値 780》


 《個体名 アイシャ・フローレス

 種族 人間

 性別 女

 年齢 21

 グラーム街 冒険者ギルド Aランクパーティー[瞬雷の剣]メンバー

 個体能力 上級雷魔法(サウザントサンダー、サンダーレイン、サンダーソード、サンダーランス、サンダーボール、サンダーボルト)

 上級能力 魔導

 攻撃魔法の威力がかなり上がる

 また消費MPがかなり減る

 ステイタス平均値 760 》


 あれ? そこまでステイタス平均値高くないぞ?

 どういうことなんだ?


「なぁーミラ。あいつらのステイタスの平均値750くらいしかないぞ」


「う~ん………人間としてのステイタスだとしたら高い方じゃろう。それに私達のステイタスは吸血鬼としてかなり高いしの」


 オレはミラに耳打ちする、薄々気付いてたいたがやはり吸血鬼のステイタスって高いんだ。

 それに上位種族だって言っていたしなバルムンクが。


「オレが倒せたのは~あれだ………あっ! そう!!このアイテムのおかげなんだ」


 オレはバルムンクが作った指輪を冒険者達に見せる、瞬雷の剣のメンバーは全員がオレの指輪に注目する。


「これはオレの家に代々受け継がれる家宝のマジックアイテムで力を底上げしたんだ!

 このマジックアイテムは魔法攻撃力を3倍にしてくれるんだよ」


 瞬雷の剣のメンバーは驚いた表情に変わる、3人の表情はそれぞれ違った。


「そうなのですか。道理で」


「そんな凄いアイテムがあったなんて……」


「そうかい、それより助けたてくれたお礼がしてぇーなにがオレたちに出来ることはないか?」


 出来ること? なんかあるだろうか。


「ミラはなんかあるか?」


「いや、特にはないのじゃ」


「だってさ、まぁー恩返しなんて考えなくていいぞ。オレたちもクエストの獲物だったし」


 ガムロは少し諦めきれないよう呻くがやって欲しいことも無いんだししょうがない


「じゃー貸しってことでどうだ?」


「そうだな。それならば、お前らが困ったときはオレたちに言え!何があってもお前らの為に動くと誓おう」


 うっわぁーすっげぇー義理堅いな。かっけぇー憧れるなぁー

 オレもいつかこんなこと言えるような男になりてぇーな。


「困ったことがあればグラーム街の冒険者ギルドに来てくれ大抵はそこにいるからよ。オレたちはギルドにあの大群について報告しなきゃならんからここで帰るぞ」


「あぁ~気を付けてな」


 瞬雷の剣のメンバーはオレたちに背を向け歩き始めた。

 だが、すぐにこちらを向いた。


「すまん!まだ自己紹介をしていなかったな

 オレは瞬雷の剣のリーダー、ガムロ・バラダイン」


「同じく。援助魔法使い、サリア・ブリーング」


「雷魔法の天才! アイシャ・フローレスよ。」


 ガムロは自己紹介と同時に握手を求めてくる、こちらの世界にも握手という文化があったのか………意外だな。

 魔法使いって変な奴が多いのか?

 必要最低限のことしか言わないサリアに、無駄に偉そうなアイシャ、変なのばっかりだな。

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