#33 BTL_side-Charlotte III

「さて…校庭の方はどうなっているのかしらね。御主人様はまだ存在を保っているといいのだけれど」


 気にならないと言えば、嘘になる。

 だって愛するひとの安否を気遣うのは当たり前でしょう?


 今の雪人では絶対に敵わない敵。異形としての格が違う。同じ土俵に立っていない。まともに攻撃を食らえば確実に即消える。


 けれど、それでも雪人は戦うと言った。策がなくとも、力では到底敵わないのだとしても。

 彼は一体どれほどの覚悟を持ってそう告げたのか……。私には想像も出来ない。


 しかし、彼がそのつもりなら、私はその言葉に黙って従うだけ。校舎内を飛び回るだけ。外から怒号や轟音、その他の悲喜交交のサウンドが度々聞こえてくるが、それにかまけて立ち止まってばかりもいられない。


 さて、この辺りかしらね。二階の渡り廊下。多分ここがこの学校のほぼ中心。ここからなら彼女を探せる。そういう『異能』を持ち合わせている。


 でも、これをすると私の長くて美しい髪が傷むのよね。キューティクルが凄い勢いで死滅しそうになる感覚すらある。気のせいだろうが、そんな錯覚に陥る。


 でもまぁ、やりますけど。


 髪に意識を集中。一つの個――一つの生命体として考えろ。

 校舎の隅々まで伸びて、迅速に対象を探せ。そして彼女を発見次第、私に報告しろ。

 蜘蛛の巣状に張り巡らせれば、校舎の何処に居ようとサーチに引っ掛かるはず…。


 エモノを巣の中心で待つ女郎蜘蛛の気持ちですよー

 …集中しよう。くだらない戯言を言っている場合じゃない!


 伸びなさい。私の可愛い毛髪たち。

 頑張ってね、私達の幸せのために。

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