#7 Monologue I

 一人孤独に寂しく屋上に取り残された僕はこれ幸いとは言わないまでも、コレはこれで良い機会だと思い、紫煙を燻らせながら考えを巡らせていた。


 その議題はもちろんアキの話について。


 彼女の言葉は一体、どういう意味だ?


 正直に言ってしまえば、僕は亜季子に対して幼馴染み以上の感情を抱いている。


 ただの幼馴染では無く、亜希子のことを明確に異性として意識しているし、そして恐らく逆もまた言えるだろう。

 ともすればこんな言葉は自惚れの様に聞こえるだろうけど、生憎僕はそこまで鈍感系難聴主人公じゃない。

 どちらかと言えば、自分に向けられる感情を必要以上に邪推してしまう、思春期的敏感さを持った自意識高い系主人公だ。


 まあ僕の主人公としてのカテゴライズはともかく、僕達の関係についてはどうやら周りも捉えている節があるし、きっと客観的にもそれなりに正しい分析なのだと思う。


 でも、そこから先に進まないのは、現在いまが心地良いから。

 今の関係が崩れるのが怖いから。

 現状に甘え、依存しているから。


 そして―――僕の頭の中には、何か大事なことを忘れているような空白があるから。


 その過去が僕の歩調を遅くしてしまう気がする。

 僕の行動を縛っているような気分になる。


 もしかすれば、それは取り越し苦労と呼ばれる類のものかも知れないが、どうしても引っ掛かってしまう。単なる気のせいかもしれないけれど、それを精算しなければ前には進めないような変な感覚が付き纏う。


「あぁ~! クソ…もう、わっけわかんねぇよ」


 それなりに長い髪をグシャグシャと掻き毟り、誰に向けたのでもない言葉を吐く。


 とりあえず僕に出来ることと言えば、牛歩リスペクトのスタンスで、地道に一つずつ整理して考察して、順々に解決していくしかないか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る