灰色の雪

どこまでも寒い現実。
この物語に描かれたのは——現実の寒さ。不条理さ。
不条理だといくら叫んでも、何一つ変わることのない世界。

無学でも、温かな心を持った純粋な少年。
美しく、優れた頭脳を持つその友人。

いい、悪いという表現は、きっとこの物語にはそぐわない。
寒く、冷ややかな現実の中で必死に生きた二人の少年が描かれたに過ぎない。

現実のやり切れなさを、否応なく突きつけられる。
そんな、灰色の世界を描いた物語。

薄汚れた貧民街に雪が降る。
すべてが白く隠されていく。
白い雪の美しさは親友に似ている。
トムは、雪も親友も好きだった。

父とともに貧民街に住み、禁書を焼く仕事をするトムと、
トムがこっそり持ち出す禁書を読んで知識を得るセシル。
不条理の中で生きる2人の少年の友情は、ある日あっさりと――。

トムは、己の姿かたちや愚鈍な頭脳を美しくないと言い、
セシルは、雪が隠す醜い貧民街に己の心をなぞらえる。
互いに互いを、美しくて手の届かない貴いものだと羨みながら。

私の目には、どちらも美しいと映った。
ほかに選びようのない道を精いっぱいに生きる。
その姿は哀れでいとおしくて美しい。

救いのない物…続きを読む

男たちの友情の話です。

トムと呼ばれる少年がセシルに本を密輸するのですが、二人の関係が終わった後に語られる最後のオチがよかったです。

短編らしく、きちんとフレーズを忘れない文章に、最高の読後感を味わいました。

見る人にとってはバッドエンドだと思うかもしれませんが、僕的にはこの終わり方がベストだと思いました。

雪の美しさ、この話を読めば一層深まることでしょう、おすすめです！

次の話にも期待して、星３つ送らせて頂きます。