第4話








一酸化炭素中毒。


身体に傷が付くこともない。

そして、何より。



頬がほんのりと、桃色に染まる。



きっと、彼はとても綺麗な顔で、眠っていくと思う。






――永遠に。







「では、今日はここまで」


「起立」



教師の声と共に聞こえる、チャイムの音。

毎回ぴったりのタイミングで、終了される。


ぼーっとしていた俺も、関心しながら立ち上がった。



学級委員の号令で、礼をして。

教師もさっさと出て行く。


いつもは、そうだったのだけど。



「おい、中橋」


「え?あ、はい」



不意に呼ばれて、俺は教卓へと向かう。



「あの馬鹿が起きたら、放課後に職員室に来るように言っておけ」



無表情のままの教師に、そう告げられる。


もちろん、あの馬鹿とは、みつるの事だろう。

俺は、笑いそうな口元を、必死に抑えて頷いた。



「はい」



そう短く返事をすると、相手はさっさと出て行ってしまい。

この人は、本当に必要最低限でしか、人と関わらないんだな、と思い知らされた。


何か面白いんだよな、あの教師。

生徒内だけでなく、他の教師達も、同じ印象を抱いているらしく。

よく、彼の名前を耳にしていた。



…さてと。

みつるを、起こしますかね。


俺はみつるへと静かに近づくと、未だに机に突っ伏しているその頭を、軽く撫でた。



「みつる。そろそろ起きろよ」






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