第3話






今では、みつるはすっかり元気になって。

もう普通に高校生活を、送れている。


どんどんと周りが日常を取り戻している中。



俺は、もう前の日常に戻れなくなった。



「席に着けー」


「うわ、やべ。ギリギリだった」



教室に入ると、すぐに担任が入ってきて。

俺とみつるは、慌てて席に着いた。


俺の席は、窓側の後ろから2番目。

対して、みつるの席はど真ん中の場所にある。

不意にその場所に目を向けることが、多くなっていった。



大した連絡の無いHRがあっという間に終わり、そのまま授業に入る。


教科書を左上に置いて、新しいノートのページを開いた。

シャーペンを握るが、授業の内容は、全く入って来ない。



考えるのは、彼の事で。





――あぁ。彼には、どんな死に方が似合うだろうか?





火災の死体は、必ず手を握り締め、身体を丸めるようになる。

あれだ、ファイティングポーズみたいな感じ。

でも、焼かれた身体は足を引っ張ると、骨だけ残して肉はすっぽ抜けてしまうくらい、脆くなってしまう。

それじゃあ、駄目だ。


首を吊ったら、どうだろう?

縄の痕の付いた首筋を、見てみたいなぁ。

顎の下から耳の後ろにかけて、一筋の痕が表れる。

首だけに輪切りのように付く痕とか、あれは違う。

実際は、吊るされているんだから。縦の痕になる。

でもそれだと、身体を下に下ろそうと抱き抱えた時に、何もかもが体内から出てきてしまう。

だから、これも無し。



一番、綺麗な死体。

何があるだろう…。


みつるの方に目を向けると、あいつは机にうつ伏せていて。

早くも、夢の世界に行っていた。

あんな寝方だと、教師にバレてしまうのに…。

そろそろ、教科書の角で頭を、叩かれるだろうな。



ぼんやりとそんな事を考えていると、一つの記憶が呼び起こされた。






そうだ、一酸化炭素中毒があるな。






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