第2話






これを自覚したのは、彼が刺された時。

二年前。二人で夜遅くの街を歩いていたら。






――ドスッ。



鈍い音が聞こえたと思ったら、みつるが倒れていて。

しばらくの間、街はいつも通りの動きをしていたのに。



「…みつ、る?」


「きゃああああ――――っ!!」



俺が言葉を落としたと同時に、日常が破れていった。


俺と彼だけが、止まっていて。

街の中の人々は、それぞれに叫び慌しく動き回っている。

それが、なんだか可笑しく感じた。



目の前で沢山の血を流して、気を失った彼。


慌てて逃げる人。

立ち止まっては、ただただ叫びまくる人。


そんな中、俺はやっぱり立ち尽くしたままで。




死んでしまう。死んでしまう。

嫌だ。嫌だ。

そんなの、嫌だ。

お願いだから、死なないで。

ねぇ、みつる…?



それと同時に生まれた感情。







死んだ君を、犯したい。







どくっ…と、鈍く血液が流れていくのが、わかった。



な、なに?これ…。

あっつい…何で、こんなに


興奮するんだ?



白く霞んでいく頭の中。

それでも、周りの音はよく聞こえてきて。


五月蝿いなぁ…。

静かにしてくれないかな?






こんなにみつるが、綺麗に寝てるんだから。

起こしたらいけないだろう?


――――――――












あの時感じた、これらの想い。

今思い出しても、ぞっとする。





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