第8話








「…寝過ごした人?」



彼の言葉に、怪訝な声を出す明人。

あー・・・。やばいな。

この二人が一緒に居るのは、やばい。


好きな声が倍に存在しては、何時もの倍、俺を高ぶらせた。



「あ…この間は、どうも…」


「ん。いえいえ」



小さく笑うと、彼は「じゃあね」と言って何処かに行ってしまい。

あっ…と声が出そうになるのを、俺は慌てて抑えた。


恋人が居る前で、他の男を恋しがる訳には、いかない。

けれども俺は、これでハッキリとした。






俺は、もう明人じゃ駄目だ。






俺は、ぼーっと立ち尽くす。

出来れば、気付きたくなかったなぁ…。


そんな俺の様子を、彼は不信に思ったのだろう。



「…雅春?」



心配そうな顔をして、俺の顔を覗きこんでくる。

俺は、息を深く吐いた。

しっかりと、彼の眼を見る。


そして、震えそうになる声で、俺は告げた。




「俺、他の人の声に惚れた。だから…別れてほしい」







「…は?」











「何だよそれ…何だよそれ!」


「――っう…!」



突然胸ぐらを掴まれて、俺は息が詰まった。




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