第7話






けれど、それからも何時も通りに過ごして。

忘れよう、忘れよう、って繰り返し自分に言い聞かせた。


教室で明人を待って、今日も愛しい声と共に、帰る。



「なんか、うちの部活…マーチングにも手を出すかもしれねえ」


「え、まじで?」


「まじまじ。そんな話をされた」



マーチングか…。

それって、あれだよな。

演奏しながら、歩いたり色んな隊形みたいなのを作ったりするやつだよな?


テレビや動画でなら、見たことはあるけど。

まさか、我が高の吹部がするとは。


やばい。

なんか、ワクワクする。



「5mを8歩で歩くのが基本らしい」


「え、そんなのあるんだ」


「そ。1歩、62.5㎝。後ろ歩きでも、関係なし。まぁ、あくまでもそれが基本、ってだけな話だけど」


「へぇ…。…なぁ、明人ってチューバ演奏しながら、動くの?」


「おう。肩に担ぐらしいぞ」


「は!?やば!あれを担いで、テンポ180とかを動くの?」


「200くらいも、あるだろうな…」



思った以上に大変そうだ。


ついつい色々と聞いて話し込んでいたら、もう駅に着いていて。



「あと三分で電車来るってさ」


「ちょうど良かった?。速攻帰れる!」



明人の言葉に、俺は思わず笑みが溢れた。

そんな俺を見た明人が、口を開いた時。









「あ、寝過ごした人だ」





――どくん。



後ろから聞こえた、狂おしい程好きな声。


自分の身体中に、一気に血が巡っていくのがわかった。



俺は、ゆっくりと振り返る。

自分の瞳に映るのは、この前「終点ですよ」と、優しく起こしてくれたあの人で。






…なんで?


どうして、また出会ってしまったんだろう。






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