第6話






「…あの、終点ですよ」



流れ込んできた、その声。

電車で座ったまま眠ってしまっていた俺は、それを聞いた瞬間に、目を覚ました。


目の前には、しゃがみ込んだ男子高校生。

真面目そうな、人の良さそうな雰囲気をしている。



「…あ、え?」


「終点ですよ。降りなきゃ」


「あ、ありがとうございます…」



俺が慌てて立ち上がると、彼はニコリと笑って電車を降りた。

俺もモタモタしながらも、それに続く。


心臓が何時もより強く、脈打っている。

熱い。熱い。

身体の中から沸き起こる熱に、俺は苦しくなった。



何だ、あの声。

何で、こんなに身体が熱いんだ。

何で






明人の声より、好きだと思うんだ。






理由はどうであれ、俺は明人と付き合っているのに。

他の人の声に惚れてしまった。


認めたくない。

けれども辺りを見回しては、さっきの彼を探している。

もう一度、音を発してほしい。

何でも良いから、聴きたい。



頭の中では、さっきの声が何度も繰り返されて。

同時に、明人の顔がチラついた。





一途に相手を想えない自分を、俺は初めて恨んだ。







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