フェーズ:014『いつか来る死を記憶せよ』

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Title:『いつか来る死を記憶せよ』


【真吾】

「なぁ、ロトクジの結果どうだった?」


【浩介】

「えっ!? いや……ぜんぜんダメだった。

 今回は絶対くると思ったんだけどさぁ……」


【あずさ】

「浩介って、次は絶対って言うわりに

 当たったことないよね」


【浩介】

「う……うっせぇな。

 それより真吾とあずさはどうだったんだよ?

 真吾はいい予想屋と知り合いになったんだろ?」


【真吾】

「へっ!? あ……ああ、あれガセだったんだよ。

 もー酷いハズレ馬券掴まされて泣きそうだわ」


【あずさ】

「ちょっとぉ! そんなんで、

 あたしにお金貸してくれる話は大丈夫なの!?

 闇金に借りてるお金返さないと、

 マジでヤバいんだけど!」


【真吾】

「まだその話を持ち出すってことは、

 あずさ……パチンコダメだったわけ?」


【あずさ】

「財布すっからかん……。

 もう明日のご飯代もないわよ……」


【浩介】

「ははっ! お前らって、ほんと運がないよな!」


【真吾】

「ちょ、あずさと一緒にすんなっつーの! 

 俺には幸運の神がついてるし!」


【あずさ】

「……はいはい。

 もう好きに言ってなさいよ。

 それよりこの後どうすんの?

 貧乏人3人集まって、

 このまま愚痴大会で終わったりしないわよね?」


【真吾】

「出たよ、あずさの面白いとこ連れてってが……。

 なぁ浩介、どっかいいとこねぇの?」


【浩介】

「うーん……だったら、

 今話題の心霊スポット行ってみっか?

 噂によると未来が映る鏡があるらしーぜ」


【真吾】

「マジか!」


【あずさ】

「……バカね。そんなのあったら、

 ギャンブルで勝ちまくりじゃない」


【真吾】

「だよな……。

 でも暇だし行ってみない?」


【あずさ】

「そうね。ここにいるよりマシだものね……。

 それに……自分の未来とか、

 ちょっと興味あるかも」


【浩介】

「よし、決まりだな!

 ちょっと車まわしてくっから、

 このまま待っててくれよ」


一攫千金を夢見るギャンブル仲間の、

真吾、浩介、あずさ。

3人は週末ともなれば誰が言うでもなく集まり、

それぞれの成果を報告しあっていた。


だが――基本的に財布が肥えることはなく、

痩せるいっぽう。

しかし、それもまた彼らにとっては、

趣味の延長にある逸楽のひとつだったのかもしれない。


【浩介】

「さぁ、ついたぞ。

 あの鏡の前に立てば、

 未来の自分が映るんだとよ。」


【あずさ】

「はぁ? この薄汚れた姿見に?」


【真吾】

「ただの鏡にしか見えねぇよな?」


巨大リゾートホテルの成れの果て。

荒れに荒れた廊下の奥に、その鏡はあった。

錆、汚れ、くすんだ鏡を浩介達が眺めていると、

湖面に波紋が起きたように鏡面が揺らめき、

あるビジョンが映し出された。


【浩介】

「お、おい……真吾が映ってるぞ!」


【あずさ】

「すっごく高そうなスーツ着てない?

 それに見て……指におっきな宝石つけてる!」


【真吾】

「でも、おかしくねぇか?

 俺……背中にナイフ刺さってんだけど」


【浩介】

「うおっ! マジか!?

 ちょ、これどうなってんだ!

 足元に札束散らかってるけど、

 何があったんだよ……」


【あずさ】

「見て! 次の映像に変わったわよ!」


【浩介】

「今度は俺か……」


【真吾】

「はっ!? ハマーに乗ってる!

 お前の車……ただの軽だよな?」


【あずさ】

「それに、さっきの真吾の時みたいに、

 高そうなアクセつけてない?」


【浩介】

「だけど、やっぱ……おかしーぞ。

 俺……頭陥没してんもん」


【真吾】

「し、死んでるよな? 絶対……」


【あずさ】

「ふたりに何があったのよ!

 あんた達……なんか隠してない?」


【浩介】

「それどころじゃねぇって!

 おい! 見ろ!

 次はあずさの番っぽいぞ!」


【あずさ】

「ねぇ、私もお金持ちになって、

 死んでるとかじゃないでしょうね……」


【真吾】

「いや、違うみたいだぞ……」


【あずさ】

「な、何よ……これ」


【浩介】

「首に紐を巻いてる!

 自殺か!?」


【真吾】

「良く見ろ、そうじゃない……絞首刑だ」


【あずさ】

「なんで全員死んでんのよ!

 ってか……どうして私は死刑なの!?

 ぜったい……いや!

 私は借金返して人生を楽しむんだから!」


【真吾】

「はあぁ……ほんと、なんなんだよ。

 せっかくいい気分だったのに、台無しだわ……」


【浩介】

「ああ、マジで気分悪ぃな……。

 とっとと帰ろうぜ……」


青ざめた顔で立ち去る、真吾、浩介、あずさ。

鏡が映した未来が、

3人に訪れたことは語るまでもない。


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