第四話 行動開始


 ユウはクルツとビリーに、本部からの命令内容を伝えた。


「はぁっ!? 本部の野郎共、俺らに死ねって言ってやがる!」


 クルツが吠えた。


『ほぼ壊滅状態の小隊だからな、成功すれば儲けものだと思ったのかもな』


 続いてビリーも無線越しで溜め息を付いている。

 ユウとしては、これ以上精神的負担をかけさせたくなかったが、命令とあっては伝えるしかない。


「で、どうするよ、隊長代理さん?」


 クルツが疲れた表情でユウに質問した。

 ただでさえ絶望的な状況なのに、絶望的な命令を下されれば、誰だってそんな表情になってしまうだろう。


 ユウは顎に手を当てて考えた後、ビリーに無線で聞いてみた。


「ビリー、あのロボットの弱点はわかった?」


『いや、特にわからんな。……と、呑気に作戦会議やってる暇はないぞ』


「どういう事?」


『あのデカブツ、ついに《王国》の方へ歩き始めやがった!』


「なんだって!?」


 ついに人型巨大兵器は、《王国》へ向けて進軍を始めたようだ。

 王国唯一の入り口である山を切り崩した道には、なけなしの戦車が三両と歩兵小隊が十程度しかない。

 元々自然が《王国》を守っていた事にあぐらをかき、戦力増強を怠っていたのだ。

 横幅100メートル程度のこの道を抜けられたら、《王国》は事実上敵に必敗の王手を突きつけられてしまう。


(これは考えているより、動くしかなさそうだね……)


 ユウは、覚悟を決めた。


「小隊員に告ぐ! 我々は今からあの巨大兵器を鹵獲、最悪は破壊する!」


「おいおい、しょっぱなから命令違反かよ!」


『いや、あれが《王国》に行ってしまったら元もこうもない。破壊は十分視野に入れるべきだ』


「うん、懲罰は受けるかもしれないけど、覚悟を決めて欲しい」


『俺はやる。こんな傭兵でも受け入れてくれた《王国》に恩を返さないとな』


 ビリーは無線越しで決意を表明してくれた。


「あぁ、どちらにしてもやられちまう可能性は高いな! なら、一矢くれてやろうじゃねぇの!!」


 クルツはヤケクソ気味に答えてくれた。


「二人共、ありがとう。とにかくアレを《王国》に行かせないのが絶対条件だ。鹵獲は二の次でいいよ」


「了解だ!」


『了解した』


「では、今から言う指示は作戦ではない。その場で臨機応変に指示を出すから」


 ユウが出した指示は単純明快だった。

 三人で人型巨大兵器の前に出る。

 そしてそれの足元で常に動き回り、弱点を探すというものだった。

 もちろんそれには進行速度を低下させるという意味合いもある。


 ユウの指示内容に驚きを隠せなかったクルツだが、他にいい案は思い浮かばなかった。

 

「では皆、行くよ!」


 ユウの号令の元、それぞれがロボットの目の前に姿を現したのだった。

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DeadLine Troopers ―死線上の兵士達― ふぁいぶ @faibu_gamer

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