第15話 宇宙人

 翌朝も黄色い声の中を通って門を通過。私は出来るだけ榊と目を合わせないように通り過ぎる。女子に囲まれた榊を見れない私。そして少しいくとまた黄色い声。橘君の予想に反して減ってないよ、女子の数。柏木君に移行するにはまだ時間がかかるのか。あの柏木君の変貌は時間がかかるだろうな。




 ホームルームに来た先生を見て私は喜び、当然とばかりに席をくっつけてた隣の男子は元居た場所に戻って行った。先生が私の教科書を持ってきてたから。良かったこれで心おきなく……勉強できる。



 何だろう。恒例にするつもりだ。絶対に。柏木君がお昼を誘いに来てまるで集合のように生徒会室での昼食となる。なんなの? みんな教室が嫌なの?

 生徒会には全く関係ない感じの話で盛り上がりを見せている。何気に三人は話が合うみたいだ。

 と、そこへ


 コンコン


 ん? 先生かな?

 私が立ち上がり生徒会室のドアを開けた。そこには三人の女子生徒。


「何か?」


 おいおい、中の三人! 何故チラリとこっちを確認してまた話をはじめる。こっちに興味をもっと持ってよ! これは私の仕事なの?


「あのー。先生に言ったら生徒会長に直接って言われて」

「生徒会に入りたいんだけど」


 なぜか中を覗き込んでる三人の女子。生徒会長に用だから?


「三人とも?」

「うん」


 一挙に女子三人! なんか私が勧誘した時に逃げられた子が混じっているけど、そんなことよりも、女子の方が多くなる! これは嬉しいよ。


「もう役職は埋まってる。欠員が出た時にでもまた名乗り出てくれ」


 ガラガラ


 って何時の間にか榊は私の後ろに来てそう言い切り、女の子達の目の前でドアを閉めてしまった。


「え? いいじゃない? 多くても?」

「そんなに仕事もないし、無駄に人数が多いと話し合いもこじれるよ」


 柏木君も意外にも榊に賛同する。話し合いがこじれるもなにも榊の引いたレールに乗ってるだけなんだけど。


「さっきの子達は勘弁して! 一年の時から追い回されてるから」


 橘君のファンだったのか。どうりで一回目の私の誘いは断って、橘君が生徒会にいることがわかって来たんだ。最初の誘いは断ったのに。


「アリス、生徒会長の権限だから」

「はいはい」


 ということは、今の男子だらけの生徒会室は変わらないんだね。

 ってか、生徒会長の権限ってどこまであるのよ!


 まあ、橘君目当てのやる気のない子達にうろちょろされるのも確かに嫌だな。橘君も相当嫌そうだったし。って、何が気にしてないだ。橘君もめっちゃ気にしてるじゃない!

 ……やる気のなさなら彼女達に匹敵する私を生徒会になぜ入れたの榊は?




 柏木君の教室が気になる私。お昼が終わって帰りにも覗いてしまう。嬉しげに近寄る女子。ああ、なんか宇宙の本を広げて話しかけてるよ。そういえば柏木君って宇宙研究会とかだったっけ? なんかそんなクラブに入っていたよね。どこからかその情報お仕入れたのか話のキッカケ作るのに必死だな。



 さあ、自由に一人席を満喫している私。隣の男子がチラチラこっちを見てる。なによ! 教科書のページはちゃんとあってるから。


 ホームルームが終わり帰り支度をしていると隣の男子が話しかけてきた。なんだろう? 不満? 今までの不満?


「佐久間さんって生徒会の誰かと付き合ってるの?」


 きたよ。これが嫌だったんだ。もう桐山の二の舞はごめんだし。噂や詮索、関係ないことにまで入ってくる。これが嫌だった。


「俺と付き合ってるの。香澄にちょっかい出さないでね」


 榊は相変わらず神出鬼没だね。そして、この学校でその発言はどうなんだろう? 桐山に言うのと話は全く違うんだけど。


「ほら、行くぞ!!」


 また榊は私の手を取り歩き出す。



 教室を出て生徒会室に近づいた時にやっと声をかける。


「ちょっと! 今のはマズイよ」

「なんで?」

「……」


 なんでってなんで?

「アリスはあれが嫌だったんだろ?」

「そうだけど」

「じゃあ、いいじゃないか」

「……」


 いいのか? いや、いいのか? 榊の気持ちがわからない。わかったことなど一度もないんだけど。



「じゃあ、俺は鍵を持ってくるから」

「はっ?」


 っていう、私の言葉を無視して鍵を取りに職員室に行く榊。榊はなんでここに私を連れて来たのよ。一人で来れるって! いうか来てるし毎日!


「あれ? 榊もいたんじゃないの?」


 橘君が声をかけてきた。私もそう言いたいよ。


「今、職員室に鍵取りに行ってる」

「ふーん。榊も大変だ」

「え!? 鍵!?」

「まあ、そうだね」


 なんか橘君含んでるんだけど。なんなの?


「佐久間! 助けてよ!」


 なんかすでにいろいろ疲れてる感じが滲み出てる柏木君が来て、なぜか私に助けを求めてるし。


「なに?」

「見てたでしょ? 宇宙の本を持って来てた子」

「ああ、うん」


 橘君はもう爆笑してる。なに?


「うん。じゃないよ。あんなの来られても! 助けてよ」

「あー! ごめん。いや、頑張ってる子もいるなって……ごめん。今度は助ける」

「そうか! そう来たか! まだ隆をオタクの延長だと思ってるんだな」


 目に涙を浮かべまだ笑いを堪えてる橘君。いや堪えてないね。完全に柏木君の状態を楽しんでるね。


「宇宙人の特集持ってこられて参ったよ。宇宙人には全く興味がないのに。宇宙イコール宇宙人の発想なんだろうけど」


 柏木君は相当、宇宙人ネタで絡まれたんだろうな。




「おーう。お待たせ!」


 待ったよ。榊! 私の教室からここまでくる時間のロスの分待ったから!


 ガチャガチャ

 ガラガラ

 と榊は生徒会室開けて席につく。

 さあて、今日のお題は?


「先生がいろんな部の網の重りになりそうなのをチョイスしてくれた」


 終了。……なんだ、生徒会室っぽいのは昨日だけ? いや、昨日もテーブルにはコスプレグッズが山のようにあったし。

 なんだ、生徒会ってなんなんだ! そして雑談が続く、どうやら宇宙人の女子生徒の話で盛り上がってる。いったい彼女はどんだけ頑張ったんだ。




 榊と私の噂はあっという間に広まったようだ。朝の榊の周りにいた女子の群は消え去った。榊! 私を利用したの?


 生徒会室には雑談が咲き乱れ、榊の家でのご飯当番は交代で毎日続いた。朝ご飯以外はずっと一緒に食事をして放課後にはギリギリまで榊と一緒にいる生活が続いている。ただし、榊のキス魔はなりをひそめている。

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