第14話 麻婆豆腐と杏仁豆腐

 そのままいつものスーパーへと二人で向かう。


「あー、今日は麻婆豆腐食べたいな」


 さらっとリクエストするフリをして私に料理当番を振る榊。


「昨日、役目は果たしました。今日は榊だからね。あー、杏仁豆腐が食べたいな」

「デザートになってるし。お! これで俺の使命は終わりか?」


 そこに売ってる杏仁豆腐を手に取り嬉しそうに榊は笑ってる。そのまま榊の持ってる杏仁豆腐は没収。話してたら食べたくなったのでそのまま杏仁豆腐はカゴの中へ。


「はい。豆腐に挽き肉……生姜やネギはある?」

「香澄、麻婆豆腐レパートリーじゃないかよ。作って」

「嫌だ」

「レパートリーが切れちゃうよ」


 どんな脅し文句だよ。


「作って! 麻婆豆腐食べたいな! 杏仁豆腐と」


 折れない私に榊は諦めたみたい。




 さあて帰ろう。


「あれから桐山だっけ、連絡ないの?」

「ん? ないよ。さすがにあれではもうしないでしょ?」

「もう大丈夫なんだ」

「うん。まあ、まだ桐山とどうなのってメール来るけど、生徒会入って忙しいから返事出来ないって言って回ったせいか、ずっと連絡減ったから」


 生徒会のイメージってどんなんだろうか、生徒会入ったから忙しいの一言で授業中にまでメールを送ってきてたのまでおさまった。きっとお硬いイメージなんだろうな。

 実際の生徒会室はコスプレの山なんだけど。



 なんのためらいも躊躇もなく榊の家に上がり杏仁豆腐とかを榊の冷蔵庫に入れて行く私。


「ああ、今日は宿題多いんだ!」

「俺は少ない!」

「じゃあ、麻婆豆腐作る時間たっぷりあるね」

「……」


 悔しそうな榊。初日はイキイキと料理を作ってたくせに!

 宿題をテーブルで黙々とする私達。


「終わった!」

「じゃあ、お願いします。麻婆豆腐」

「杏仁豆腐じゃないの?」

「いや、買っただけでしょ?」

「杏仁豆腐は出てくるかな?」


 何の意地悪なのよ!




 榊は料理をしている。私は榊の様子を見ながら宿題をしている。


 榊はどうして私といるんだろう。……一人が暇だからか。



 ご飯を食べて無事杏仁豆腐も食べて、満足げな私はまた洗い物。榊次々にゲームを出してくるけど、きっと昔のゲームだよね。映像がどれも粗い。本当に暇なんだね。



 やばい単純なのになぜかはまるゲーム。単純だからか? しまった! 叔母からの電話の時間!



「時間が! 私が家にいるかどうか電話がかかってくるの! 帰るね!」

「あ、うん」

「じゃあ、また明日!!」

「うん。明日」


 榊と玄関で別れる。なんか物足りない……キス魔がキスをやめたみたい……ってヤバイ早く家の中に入らないと!!



 どうやら一度かけて来て二度目の電話だったみたい。トイレにいたと何とか誤魔化した。危ないとこだった。叔母は家が近いから見にくるかもしれない。気をつけないと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る