第29話ドキドキする

 着替えて出てきた拓海を見てドキッとする。ただのスポーツウエアなのに。ああ、もう嫌になる。しかし! いつもと違う拓海にドキドキするのはまだ早かった。

 最後の試合にレギュラー確実だと言った言葉は三年の人数じゃない。拓海はすごい上手かった。スポーツ音痴の私がわかるほど。何人いるの? ここにいるバスケ経験者?

「ねえ、果歩、この中のバスケ部って何人?」

 思わず聞く。拓海はバスケ部のレギュラーである吉田君相手に何度もボールを奪っているので上手いんだろうけど、群を抜いてるように見えるのはバスケ部じゃない人がいるからか? と思ったから。

「何人って安田君以外全員だよ。まあ、レギュラーじゃない人も混じってるけどね。安田君上手いよね。健太郎が誘っても落ちなくって残念がってたよ。前の学校かなりバスケ部強かったのにそこのレギュラーだってバスケ部の顧問の先生から聞いてたから、健太郎めっちゃくちゃ張り切って勧誘してたのに」

「え?」

 あ、ヤバ! 大っきな声出してしまった! みんなこっち一瞬見てたし。

「え? 樹里知らないの?」

「知らなかった」

 三年生だけでレギュラー埋まってないどころかあぶれてるって。拓海なんであんな言い方して……まあ、言いにくいか。自分で強いバスケ部のレギュラーだったなんて。そういえば先生にも声かけられたって言ってたな。そこで気づくべきだった。

 はあー。拓海のこと聞きたいのに聞けないから、私拓海のこと何にも知らないよ。

「安田君って自慢しなさそうだもんね。今日もどうしても安田君とバスケしたくって樹里をダシに誘ったらしいから、健太郎」

「そ、そうなの?」

 私もダシに使われたのね。って、私……ダシになったのかな?

「強い人が相手でやりたいんだって。本当、バスケ好きには困ったもんだよ。それにしても、健太郎めっちゃくちゃ張り切ってたのにボロボロね」

「だから吉田君は拓海とは別のチームなんだ」

「そう、あれだったらレギュラー対安田君と補欠でも十分勝負になりそうね」

 それは吉田君がかわいそうだよ。もしも負けたら立ち直れないんじゃない。そう思えるほど拓海は強い。


 さすが体育会系、途中休憩が入るものの、バスケし続けてる。そこに帰宅部の元バスケ部の拓海がいる。


 お昼になったので飲食禁止な体育館を出て体育館近くの木陰でランチタイム。それ用にか椅子とテーブルもおいてある。

 果歩は今日は吉田君と食べるようだ。

「お疲れ! って疲れてない?」

 拓海はそんな風に見える。

「疲れてるって! 久しぶりだったし、暑いしな。ところで樹里さっきはなに叫んでたの?」

 やっぱり聞こえてたか。そして、気になってた?

「あー、拓海がバスケの強豪校のレギュラーだったって聞いたから」

「あーそれか。まあ、レギュラーって言っても下っ端だって。レギュラーにもいろいろいるから」

 下っ端な動きじゃないようだけどけど。まあ、これ以上掘り下げて話をするのはやめよう。

「そう。お昼食べよう! お腹すいたし」

「樹里は動いてないのに?」

「うるさい。誘ったんでしょ?」

「あー、ごめん。食べよう」

 拓海と食べるランチタイム。私達は木陰のベンチを選んだ。テーブルのバスケ部はなにやら盛り上がっている。なんの話をしてるんだか。


 食後に少し休憩してはじまった後半戦? さっきとはチームを変えたよう。みんななんか気迫すら感じるんだけど……もしかして……。

「果歩? このチーム分けって……」

「健太郎に言ったら周りのレギュラーまで張り切っちゃって! レギュラー対安田君&補欠のみんなになったのよ」

 果歩この状況を楽しんでる?

「え? それってもし拓海達がもし勝ちゃったら……」

「補欠って言ってもそんなに差はないんだって、多分。」

 いや、それならなおさら試合展開が心配なんだけど……さっきの拓海の動き……。


 結果、ギリギリで吉田君率いるレギュラーチームが勝ったみたいだ。はあー。もうなんか違う意味で緊張したよ。それにしても差がないなんて大嘘じゃない! 補欠だってすぐにわかる人、何人かいたんだけど。まあ、吉田君チームめっちゃくちゃ喜んでるし、なぜか拓海も嬉しそうなのよね。なんでかな? でも、バスケやってる拓海楽しそうだった。なんでこっちにきた時にバスケ部入らなかったんだろう拓海。入ったらあのレギュラーチームの誰かがもしかしたらレギュラーから落ちてたから?

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