第28話 報われない想いを抱えている

 日曜日はさすがに……母達がいるのに朝は気にせず私の部屋に入ってくるんだね。今日も近いよ拓海!

「おはよう。な! お願い! ついて来て!」

 寝起きにお願いされても、頭が全く働いてないんだけど……。

「なに?」

「バスケ! 健太郎とするんだけど、一人じゃさあ。健太郎は彼女来るし。いいだろ?」

 そういえば…果歩に日曜日ってなんかしてるのとか聞かれたんだけど、これのことだったの?

「金曜日にはわかってたことじゃない!」

「あー、まあね。いいだろ?」

「わかった。行くよ」

 拓海がいない家にいる自分がもう想像できないよ。あー、これもうヤバイんじゃない? 私。


 服をたくさん買っといて正解だった。服選びに迷うとこだったよ。拓海の好みの服があるのはありがたいよ!

 バスケって観るだけだよね。ほとんどスカートしか持ってない私はスポーツするには相応しい服は少ないんだけど。まさか私までバスケはしないよね。できないし! 果歩もね。


「いってきまーす」

「いってきます」

「いってらっしゃい」

 あ! そうだ!

「また今日も二人で出掛ける?」

「えー、樹里ったらダメ?」

 母が乙女に見えるんだけど。音符も飛ぶよもうすぐ。

「いいよ。いってらっしゃい」

 と、手を出してる私。母達だけ外食ってズルいもんね。

「樹里帰ってきてからじゃ……」

「今いただきます」

「はいはい」

 母は財布から今夜の私達の夕食代をいくらにしようか考え中。

「拓海って結構食べるんだよねー」

 さりげなく煽ってみた。

「お、おい!」

 ダシに使われた拓海は焦ってます。でも、本当に食べるんだもん。

「はい。お釣りは返してよ!」

「はーい。じゃあ、いってきます」

「いってらっしゃい」

 家を出る私達。

「樹里! 俺をダシにするなよ!」

「でも、この前の焼肉ギリギリだったんだから!」

「え? マジ?」

「嘘!」

「んだよ! ほら時間くったから行くぞ!」

 確かに母との交渉で時間をかけちゃったな。


 こんなに近くにあったんだこういう施設って場所に到着。スポーツ好きは知ってるのかな? スポーツに縁のない私には新鮮な場所。体育館っぽい場所で、一日なのか時間でなのか借り切ってるらしい。お弁当を持ってくるかお昼ご飯を買ってきて集合となってる。拓海が朝にお弁当作ろうとするのを慌てて止めた。さすがにそれは果歩にバレる。拓海の弁当を見れば私が毎日食べてる弁当を誰が作ったのかということが。果歩は怪我してるから母が作ってると思い込んでくれてる。いつもは私が自分で作ってるということを果歩は知っているから。まあ、寝坊して買う事も多いんだけど拓海が来てからは毎日弁当だし、見ればすぐにわかるよ!

 という事でコンビニでお昼ごはんを買って行く事に。拓海も自分のだけ作るのは面倒なので一緒にした。


「樹里!」

 果歩、なんで私にはいつも内緒なんだよ?

「果歩言ってよ!」

「えー、面白いじゃない? いつ安田君に聞いたの?」

「け……昨日映画観に行った帰りに」

 危ない今朝と言おうと……あ、言ってもいいのかな? 面と向かってあの至近距離で寝起きとは誰も思わないか。

「なんだ! 昨日もデートだったの? 気を使ってたのに。樹里ったら」

 果歩の私のイメージってどんなのよ。確かに片想いし続けてたけど! そして、また報われない想いを抱えてるんだけど。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る