第16話 『人に化ける』

 沈黙が訪れる。


 原因は俺だ。


 騙すことに罪悪感を抱いた俺は人の姿となった。


 なってから後悔する、これは俺だけの問題ではないのだ。神生の命もかかっている。嘘が良くないこととはいえ褒められる事ではない。一種の恐怖心を抱いた俺は恐る恐るトライルのお父さんの顔を見た。


 「ほぉ………」


 笑っていた。

 見間違いではない、人が面白いものを見たときに見せる微笑み、それを彼は顔にはっきりと浮かべていた。


 「トライル、どういうことかな? 説明しろ」

 「あ………」

 

 お父さんにそう言われ困った顔で説明をし始めるトライル、罪悪感が増した。


 「……もう隠さずに言うけど霊彦と神生は人間族、でもアイツ等とは違う

  わ! 私たちを肉牛だなんて言わないし軽蔑の眼差しも向けてこない、それもそ

  の筈、私達ホーガという存在を知らないんですもの」


 「ホーガを知らない? 意味がわからんぞ、人間族がホーガを知らん筈がない。二

  カ国を除いてホーガと人間族は共存している」


 「霊彦達は異界から来たの、ホーガどころか人間以外の知的生命体も魔法も知らな

  いわ」


 「魔法を知らん? そんな馬鹿なことがあるものか、魔法なしでどうやって生きて

  いく」


 「霊彦達のいた国では魔法を必要としない科学での文明が築かれているわ」


 「なる程、科学文明か……シャーパ法国と同じだと」


 「そう、だから彼らはアイツ等とは違う! 目と髪がその証拠よ! 私とゲンナをバ

  ンから助けてくれたのも阿須波なんだからアイツ等とは絶対に違う」


 「バンだと? あいつらは北魔大陸にしかいない筈だが?」


 「なんでか知らないけど現れたの! 初めはゲンナが守ってくれたけどやられそう

  になって……霊彦が盾になってくれたの」


 「…その少年が優しいという事は分かった、だが泊めてやるのはいいが嘘はダメ

  だぞトライル、人間がバンの攻撃を受けたら跡形も残らないだろう、耐えれる

  のは龍人くらいだ」


 「嘘じゃないもん! 攻撃が全く効かなくて霊彦が脅したら消えたんだから! な

  んで効かないかは本人も分からないらしいけど……」


 「……まぁ入りなさい」



 こうしてトライルの激しい主張により何とか俺たちは生き延びることができたのだった……




―――――――――――――――――――――――――――――――――――




 「神生、さっきはごめんな」

 「え? ……あ、いや大丈夫だよ、むしろ本当の事を言った霊彦が正しいから」

 「だが……」

 「霊彦らしくないよ、いっつも私を罵るくせに」

 「それはお前が悪いからだろ」

 「ふふっ……そうだね」

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