第11話 『偉大なる魔導師』

 霊彦達が文房具文明の利器を披露している頃、ダネ村も所属するギャラド王国の宮殿に、国王と魔導大臣、外務大臣、そして今風龍の話題でもちきりのカンナル山脈のある地域の国司、及びそれらの部下が集まっていた。


「大魔導師が集まらないだと!?」

 

 そう叫ぶのは国王『ラン・ダンク・ギャラド』、そしてその言葉に答えたのは魔導大臣『ウェン・トン・ルン』、如何にもリズムに乗ってそうな名前だが立派な強面のご老人である。


 「その通りでございます陛下、現在我が国出身で羊脚族ホーガのカルエンは何とか味方に

  はなってくれるようですがいくら大魔導師とはいえ風龍が相手となる

  と……どんなに善戦しても一時間程の防衛で精一杯でしょう」


 「一時間……何故ローゲンは世界を破滅へと導きかけた大悪龍ドラゴンが復活しよう

  としているというのに力を貸さんのだ!!」


 現在彼らが話しているのはお察しの通り風龍についてだが、それは決して喜びによるものではなかった。何故なら風龍は人を襲うからである。しかもその力は物理攻撃にこそ弱いものの、ドラゴンは圧倒的な魔力を有し高度な攻撃型の魔法を使うので一度暴れれば手がつけられなくなる。そしてドラゴンを封印する方法は一つしかない、それは強力な魔法で眠らせるということなのだが、ドラゴンは必ず人の立ち入ることのできないような場所で寝、行けたとしても数キロ以内に近づくと起きてしまう為寝ている間に物理攻撃で撃退、ということができない。しかも『寝る』ということは『起きる』ということなので厳密に言うと封印さえもできていない。


 肝心の眠らせる方法は、先述した通り膨大な魔力を使った魔法を行使するしかなく、それをするにはこの世界において最強と言われる『最高魔法位団ローゲン』と呼ばれる組織に属する大魔導師十数人の力が必要不可欠であるのだが、今回の風龍復活の件に関してローゲンは関与しないと言うのだ。幸か不幸か大魔導師の一人、ホーガのカルエンは祖国に対する情もあってか協力してくれるというが、いくら万の兵を相手に無傷で圧勝できると言われる大魔導師であろうと相手があの風龍である、その成果ははっきり言って見込めないであろう。

 

 「何か…何か手はないのか……」


 王のその問いに答えれる者はおらず、夜の静寂に包まれた宮殿もまた、静寂が流れていった…

 


 

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