works/1177354054880210298

『紅キ罰』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880210298/episodes/1177354054880210374


 名探偵に憧れる探偵役よりも、推理を愛する探偵役の方が、きっと生きていて楽しい。

 本作の主人公は、本格推理小説を心から信じるミステリ読者だ。謎は解ける物だということを信じており、謎の側もそれに応えようとしている。しかしながら、ただブラインドに「目を瞑ってもわかる」状況まで情報を集め続けるのではなく、与えられた情報だけでは確定には至らない「今日の夕食」のメニューについての推理を出題者に確かめて見せる、場当たり的な行動力も備えている。

 確定情報からの推理と、不確定情報からの予想を兼ね備える探偵は少なくもないけれど、その上で、後者の答え合わせを出題者に行える探偵は、実のところ、比較的稀なのだ。その資質は神ならぬ人の身にて、事件を未然に防ぐ可能性を持つわけ。

 そうなると、対となる助手役に超越者の気配を持たせる、クローズドな展開を作りやすい設計も、「洋館モノを書く」というテーマのための物なのだな。丁寧なpuzzlerだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る