自分は一体何者で、何をしたいのか。何をしていいのか。
それを考えずに生きている人も多いでしょう。だからこそ、それを考えなければいけなくなったとき、何を考え、どんな結論にたどり着くのでしょうか。
歪な瞼をもって生まれたイーデルト・クローデリア。そのために祝福される「神の使い子」か、疎まれる「異界の迷い子」か、夜の明主に回答を求めることになります。
私は一体どちらなのか? と問う彼女を明主は「自分で決めろ」と突き放します。
初めて自分で選ぶ権利を与えられた彼女は戸惑い、考えるのです。
私は何物なのか。何者でありたいのか。
不器用で優しい夜の明主。
本の世界しか知らないイーデルト・クローデリア。
そんな2人の夜だけの語らいは、周囲が夜闇に包まれているということを忘れるほどあたたかいものです。
視点はイーデルト・クローデリアですが、選択したのは彼女だけでなく夜の明主も同じ。そう思うと、とても微笑ましい気持ちになります。
とくに、おまけにとても癒されました。真っ暗な夜も2人であれば、寂しいものではないのだろう。
そう思わせてくれる美しくて、やさしい神話です。
うつくしい色違いの双眸に、閉じかかった瞼。
少女イーデルト・クローデリアは、自らの行く先に悩み、三大神の神殿を訪ねます。
朝の盟主に『いらぬ』と言われ、昼の盟主に目を伏せられ。次に向かったのは、夜の盟主の元でした――。
タグどおり、「神話風味」「昔話風味」なお話です。
少しずつ互いの距離を縮めていく、イーデルト・クローデリアと夜の盟主。
二人のほのぼのとした交流のなか、やがて訪れる「選択」に、イーデルト・クローデリアはどう動くのか。
ぜひ読んで確かめてみてください。
また、「イーデルト・クローデリアと夜のおはなし」という絵本のようなタイトルが素敵です。
これは広く語り継がれているお話なのでは、と思うと、この物語が語られるまでの経緯や、二人の反応が気になってきます。
優しい二人の物語のお陰で、読後にとても穏やかな気分になれました。