第13話 夢じゃない

「マァちゃん、おはよう」


 ㅤ誰かの声がしたけど、うつむきながら小さく「おはよう」と返事をする。教室の中は暖房が効いていて、暖かい。


「ねぇ、マァちゃんってば」

 ㅤ肩を軽く引っ張られ、振り返るとそこにミヤちゃんがいた。


「あはは、どうしたのその顔。またメイクしてないし……目も腫れてない?」


 ㅤ鋭いミヤちゃんに気づかれたけど、あまり話したいことじゃなかった。どう話したらいいかわからないし……。だから適当にはぐらかそうと席に座るけど、ミヤちゃんはすぐ前の席だから逃げられない。


「何かあったんでしょ。おねぇちゃんに言ってみな」

 ㅤもちろん、ミヤちゃんは本当のおねぇちゃんじゃないです。というかワタシにおねぇちゃんはいません。でももうしょうがないから、何となくで話します。


「うんと、たいしたことじゃないんだけど、昨日泣いちゃって」

「うん」

「手紙のやり取りをしてる人がいたんだけど、もうやめるってなって」

「うん」

「それが少しさびしくて」

「そっか」


 ㅤミヤちゃんはこういうとき、静かな聞き役になってくれます。必要以上のことは聞こうとせず、ワタシの目を見てうなずいてくれます。


「まぁ、元気だしなって。せっかくの可愛い顔が台無しだよ」


 ㅤこう言われたとき、どう反応すればいいか困ります。ただ、嫌じゃないのです。嬉しいです。ミヤちゃんは優しい人だなと思います。


「でさ、その相手の人って、マァちゃんにとってどんな人なの」

 ㅤやっぱり、必要以上のことも少しは聞いてくるようです。


「だってマァちゃんにそんな相手がいると思ってなかったからさ」

 ㅤそう言われても、どう答えたらいいか。悩んだあげく。

「ユメみたいな人」

 ㅤこう答えたのがまずかったのか、ミヤちゃんは目の前でゲラゲラとお腹を抱えて笑ってしまいました。ワタシも、一瞬ムッとしましたが、一緒になって笑い始めました。


「その人とは、これからどうなるの?」

 ㅤそうミヤちゃんに聞かれたワタシは、

「会いにいきたい」

 ㅤそう答えました。

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