第6話 お風呂の時間

 夜。自宅のお風呂。白いタイルに囲まれ、ワタシは浴槽の中。お湯に口まで浸かりブクブクと泡を立てる。入浴剤でミルク色に染まったお湯が体全体を隠す。


 考えるのは恋のこと。ワタシはまだ人を好きになったことがない。はっきりとした恋愛感情を持ったことがない。


 でもだからって誰かと付き合ってみたいと思ったこともなかった。これってやっぱり変かな。


 ワタシは人を冷静に見てしまうところがある。良いところ悪いところ。でもきっと、恋愛のし始めなんて、そんなこと考えないんだろう。


 その人が良い人か悪い人かなんて、考えないで突き進む感情。それがワタシにはなぜかない。


 だけど、星の人という謎の人物は、ワタシに何らかの影響を及ぼす。謎すぎて、わからない。良い人か悪い人かなんて考えられない。


 今のワタシの感情は、恋愛の衝動より、芸能人を名乗る詐欺師に騙されてしまう感情に似てるかもしれない。よくわかりもしないのに、信じこんじゃって。


 まぁ、そこまでのめり込んではいないけど、木崎くんよりは信頼してしまっているのかも。たった二通の手紙で。不思議なものだ。


 また、手紙が届くことはあるんだろうか。こっちから送り返すことはできないような迷惑な手紙。謎しかないような手紙。


 ちょっと目を閉じたらのぼせた。もう出よう。

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