第5話 ショータイム

「マァちゃんさん。ボクと付き合ってくださぁい!」

「それはさっきも聞いたのだけど……」

 突然の告白ってこの人か。確かに全く見覚えがない。


「マァちゃん、こいつが例のヤツ」

 ミヤちゃんがワタシの耳元で囁く。男は背がクラスの中でも一番というくらい大きめで、顔も大きい。声も大きい。そしてそんな体を綺麗に折り畳んで、イスに座るワタシに向かってお辞儀してる。


「あの、ええと。ごめんなさい」

「くそっ、これで五連敗か。でもまだまだっ」

 そんな捨て台詞を吐いて、廊下にドタバタと駆け出していった。


「あいつは木崎、五十音順で片っ端から告白してるんだってさ。そんなんで上手くいくはずないのにね。でも黙ってても仕方ないからああしてるらしい。やり方を変えたら良い男になるかもしれないのにさ」


 ミヤちゃんが廊下の方を見つめながらそう解説してくれた。すごい積極性だな。そこは感心する。でもどうしてだろう、あまり嬉しくなかった。不思議。星の人からの手紙は、少し嬉しかったのに。あの手紙だって、意味不明なものなのに。


 きっと違いがあるとしたら、好きという気持ちだな。木崎くんは誰でもいいから付き合いたいというガムシャラさ。星の人は、よくわからないけど確かに好きという気持ちがそこにある気がした。


 見えない場所で、聞こえないどこかで、愛を叫んでくれているような、そんな気がした。


ㅤ気のせいかな? そう思いたいだけかな。木崎くんの告白をきっかけに、そんな思いがワタシの中に浮かび上がる。


「マァちゃんは、ああいう男どう思う?」

「うーん、悪くないかな」

「ええっ、マァちゃんって意外と単純?」


 単純かもしれない。って、木崎くんのこと言ったんじゃないよ。でも、じゃあ誰のこと? って聞かれたくなかったから、これ以上話を広げなかった。

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