第31話 病室での再会

「奏ちゃん、やっほー!!…ってか、刑事さんもいたんすね!!」

香園の取り調べの翌日、私が入院している病室にソルナ達が現れる。

一方、“彼ら”より先に小峯巡査が病室にいたため、ソルナは巡査を見るなり驚いていた。

「私の用事は済んだのだけれど、彼女から貴方達が来ると聞いてね。それで、待っていたの」

「待っていたというと…?」

小峯巡査は、首を傾げるソルナに対し、壁際にいるヤドを横目で見る。

「貴方達アングラハイフの患者もこの病院にはいるけど、病人との面会は“人間”がいた方が、貴方達も怪しまれないと思うの…解るわよね?」

「…時間を取らせて、悪いな」

ヤドは小峯巡査を一瞥した後、俯いてしまう。

 そっか…。ヤド達が視えない人間からしてみれば、私がする彼らとの会話は“独り言”として捉えられてしまい、奇妙な目で見られてしまう…。だから、それを防止するために…って事か

私は、彼らのやり取りを聞きながら巡査が病室ここに居続ける理由を悟った。


「何はともあれ、足以外は何ともなさそうだし安心したっすよ!これは、澪も同意見っすね!」

その後、ソルナ・ヤド・ベイカーの3人と私と巡査の5人で会話を進めていく。

因みに澪はこの日が出勤日のため、病室には訪れていない状態であった。

「極羽警部補の話だと…事情聴取を受けていた香園は、かなり疲弊していたようね。その理由は、敢えて訊かないけど…」

「今回の件が一件落着したから、これ以降は香園やつのコミュニティーが目立った行動を取る事は、目に見えて減ってくるだろうよ」

特人管理課うちは“貴方達”以外の人外も担当しているから、もめ事や事件が減るというのは、大歓迎ね」

巡査が事情聴取を受けていた時に香園の話をすると、ヤドがそれに対して応えていた。

「以前から思っていましたが…特人管理課に、人外の警官を入れようとする動きはないんですか?例えば、“わたしたち”の場合は、壁の中に入り込んだ被疑者だって掴まえられるでしょうし…」

そんな中で、ベイカーが少し興味深い話題を出してくる。

「んー…。確かに、一時はそんな話も出たわ。ただ、外見が人間と異なる者を警察署内で歩かせると目立つし…何より、“あなたたち”は姿を視える人間でないと警官としての教育が難しいのではないか…みたいな理由で、実用化が厳しいのが現状ね」

小峯巡査は、苦そうな表情かおを浮かべながら、ベイカーからの問いかけに答えた。

「まぁ、逆にそういった人外の警官がいた方が、被疑者逮捕する上では便利だろうがな。“目には目を 歯には歯を”って言葉が日本このくにであるように」

一方でヤドも、こんな台詞ことばを口にしているのであった。


そして、時間が経過し、ヤドやソルナ。そして小峯巡査達が病室から出る時間になる。

「なぁ、アホ猫…。帰る前に、少し病院敷地内の外に出ねぇか…?」

「あ…私は全然大丈夫だけど…」

ヤドからの提案に同意する一方、その視線は小峯巡査の方に向いていた。

「彼だったら、特に問題ないでしょう。ただ、長時間は止めておいた方がいいと思うわ」

視線を向けられた巡査は、軽いため息交じりで了承してくれた。

 警察として、怪我をしている一般人わたしに危害を加えられないかという安全の意味を込めての確認…。通じて良かったな…

私は、先に病室を出ていくソルナ達を見送りながら、そんな事を思った。

「じゃあ、俺が…車椅子ひいてやるよ」

「あ…ありがとう!」

皆を見送った後、病室で二人きりになったため、私は近くに置いていた車椅子に移動する。

一応、一人で乗り換える事は難なくできるが、その過程をヤドが見てくれていた。

そして私達は、お互い最後になるかもしれない台詞ことばを、交わしに行く事になるのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る