第5話 とてもじゃないけど他人事じゃない

 そして、ごく最近。

 嬉しいレビューをとある作品にいただきました。


 ──どんな方だろう?

 興味がわきました。

 ──どんな作品を書かれる方なんだろう?


 自分の作品を評価してくださった方についての興味は、きっと誰しも持たれることと思います。もらえる☆が多すぎて、ひとりひとり確認できない水準の方は別かもしれませんが、私にとって、作品につく お☆さまとレビューは宝石のごとく貴重です。


 覗きに行きました。いつものように。


 それは、あの方でした。


 ──ああ。


 作品数のあまりの多さに、どこから拝読していいか迷って、そのままになってしまった方だ。


 私のダメなところ。


 長~い作品や、大量~な作品数には怯んでしまう。


 そうして、そのときまで遠ざかっていた方でした。


 何の気なしに、いくつかの作品を開きました。


 ──面白い。


 おつきあいしているパートナーや友人の方の、目を剥く言動・行動に悩みつつ、優しく受け入れていらっしゃる、しかし解せない気持ちは打ち消しきれない、そんなことをユーモアのある筆致で書かれた作品でした。


 面白かったのです。

 前半は。


 けれど、読了するうちに心配になりました。


 当方、現在進行形で精神科に通っている身です。


 他人事ではありません。


 文体は愉快な語り口だけれど、現実には追いつめられてらっしゃるのではないのか。どこかに救いを、解決の糸口を探していらっしゃるのではないのか。そうではないとしても、真剣に話を聞いてくれる、近すぎない誰かを求めていらっしゃるのではないのか。


 私の黄信号が赤信号になりました。


 ──これは放ってはおけない。


 私で何か、小さなことでも力になれたら。


 使命感のようなものが燃え上がりました。


 いま思いだすと、恥ずかしいです。


 私はレビューに想いの限りを綴りました。


 ──専門家の治療を受けてください。


 大きな、大きな お節介です。


 見当違いかもしれない。


 愚かしい発言かもしれない。


 すぐに後悔しました。


 けれど、危機感も消えません。


 もし、こんな私でも、援けの糸口を投げられれば。


 この著者さまは、少しでも楽におなりになるかもしれない。


 でも、とても無遠慮で不躾で非礼極まりないかもしれない。


 焦燥感に、いてもたってもいられなくなりました。


 ──それからどうしたか?


 その方の近況ノートに、謝罪と言い訳を綴ったのです。


 ああ、いま思いだしても恥ずかしい。


 でも、結果的には最高の状況を生みだしてくれました。


 著者さまが、寛大にも許してくださり、受け入れてくださったからです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る