彼女

中学の時に初めて彼女ができた。


彼女はクラスメイトで、もともと仲も良く、両想いで無事付き合うことになった。


彼女は4人姉妹の長女だった。


僕は何度も家に遊びに行かしてもらっていたので、自然と妹たちとも仲良くなった。


だけど、彼女を僕の家に呼ぶ気にはなれなかった。


彼女は隣の小学校から上がってきた子で、弟に障がいがあることは知らなかった。


でも、僕に弟がいるのは知っていて、子供好きの彼女は僕の弟に会いたがった。


僕はいつも弟の話題になるとお茶を濁して、話題を変えた。


今まで弟の話題で僕がいい気分になったことは一度もなかったから。


それに、弟を拒絶され、僕自身も拒絶されることを心のどこかで恐れていた部分もあった。


彼女とは高校に進学してから別れたが、結局、彼女を家に招待したことは一度もなかった。


それから何度か彼女ができたこともあったけど、やっぱり弟の話題からは逃げてきた。


明るい話題ではないし、話したところで彼女も反応に困るに決まってる。


せっかく好きな人といるのに暗い気分にはなりたくない。


なんだか弟を腫れもの扱いしてるみたいで、そんな自分に嫌気がさした。


僕も兄弟の話を普通にしたい。


だけど、障がい者をバカにしている同級生を近くで見てきた僕には恐くてそれができない。


このジレンマが大学生になった今でも続いている。


これから先も、もし彼女ができることがあれば、その度に僕は幸せの裏側にある不安と闘い続けなければいけない。


『周りの目を一切気にしない心』


それが僕の一番欲しいものかもしれない。





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