第9話 決意の勇気

「ナリアっ!」

僕はほうりだされた細い腕を掴もうとして瞬間、中へと跳躍ちょうやくする。


「手、掴め!」

落下中叫ぶが、涙を浮かべた少女の瞳は目の前で閉じられた。

失神だ。


僕が、かばう。


決意して、数秒。

自らの体と腕で少女をおおう。


これで、失敗すれば二人とも死ぬ。成功しても、僕だけが死ぬ。

僕のめを涙が覆った。


だが、その涙は瞬く間にその意味を変える。


受け止められた感覚。


「生きて……る……?」

その次に来た、寒さをしのぐ刺激。

「いつっ……!」


「良かった。かろうじて助けられたみたいだね」

落下してきた方向から降ってきた声。

何もない場所からこちらを見下ろしている人が立っている。


「浮かんでるっ……」

もはや思考が働かない。足元の冷たささえ感じられなくなっていた。


「勇気ある少年だ。特別に、私の部屋に入れてあげるよ」


軽々と僕たちを持ち上げ、見えない床におろされた。


「ありがとう、ございます……」

放心しながらだが、言い切った僕に彼は頷いた。


「そのままじっとしているといい」

ナリアは彼に抱き上げられたままぐったりしていた。

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