第8話 崩壊

「ナリア、ごめん。もう言わない! 二度と言わないから」

僕の必死の叫びだ。


「ほっといてよ」

「もう一度来よう! 友達が怪我けがしてんのにほうっておけるわけないだろ」

僕の気持ち、届いてよ……!


涙を浮かべる少女は振り返って叫ぼうとした。

「もういい、嘘つき……!」

そのとき、予期しなかった振動と轟音に囲まれた。


地面を失いそうな感覚と、致命的なまでの恐怖が視界のすべてを支配する。

「地震……!」


振動が弱まっても、階段はびりびりと震えている。


「おまいら、ここも崩れるぞ! 早く逃げろっ」

ひげを生やした壮年の人物が叫んでいるのだ。

クププとか呼ばれている考古学者だったと思う。

その後ろからも、探検家のような装いの人が数人降りてきている。


「……っつ……そんなこと言われても……」

瓦礫がれきが数個ガラガラと落下してきた。


「ナリア、降りよう……早く!」

彼女が迷ううちに、ゴロゴロと轟音が響く。パラパラと砂埃が少女の顔にかかった。

「……ロン!」

決意がこもった瞳で手を伸ばした。


い寄る二人の手が触れそうになった時。

ずるりと階段は二つに割れた。

壁側にいたロンを残し、無情にもズレていくひびがナリアの涙をも引きはがして少女を連れ去る。

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