第19話 油断した喜びに巡り来る痛み

 19...




 ちち! しり! おっぱい!

 動揺のあまり乳が重なってるからね!


「はあ……」


 落ち着いて温泉を満喫している千愛(ちあ)から目を離せない。

 よっぽど嬉しいことがあったみたいで、目元が潤んでいる。

 俺も嬉しい。なにせ……


 ちち! しり! おっぱい!


 初彼女の裸ですよ!

 わかります?

 初彼女の裸ですよ!

 全裸! すっぽんぽん! 丸出しですよ!

 そんなもんガン見ですよ!


 写真に撮れないかなあ。永久保存できないかなあ。

 ふとした時に見られるように出来ないかなあ。

 ……だが、待てよ?

 常に見れるというのは、ありがたみがないのでは?

 たまに見られるから趣があるのでは?

 そこまで考えて、改めて千愛を見た。


 ちち! しり! おっぱい!


 いかん、感動のあまりそれしか浮かばない。

 そうじゃないだろ、よく見てみろ。


「いい天気だし、だけど気温は普通っていうか……風、気持ちよくていいね」


 上気した素肌を隠すものは一つも無し。

 鎖骨からなだらかに浮かび上がる胸の谷間には薄らと線が見える。

 それはシリアスモードの時に考えるとして。


 膨らみを目の当たりに出来た歓喜もさることながら、見れば見るほど綺麗な曲線してるよなあ。ぽよんぽよんっていうより、ぷるんっとしてる。

 これがいわゆる張りがある、というやつなのか。

 輪っかはそういう動画やサイトで見たどんなやつよりも綺麗な色をしていた。そんなに大きくない。先端は少し陥没気味だ。撫でたらやっぱり出てくるのかな。


 っていうか膨らんでいるおちちから下がきゅっと締まってる。

 腰のくびれとか、実際に目の当たりにしてみるとすげえ威力高い。

 クラスの女子の中でも細い方だと思っていたけど……思っていた以上に細いのでは?

 その腰の中心にあるおへそとか、そんなに深く穴があるとかじゃなくて。

 浅いし小さい。男と女子の違いはなに? へそ! っていうくらい、俺のと違う。


 あと、まあ……その。

 触る時に何度感じていたことなんだけど。

 生えてない。しょりしょりしてないし、そんな気配もなし。

 天然なんでしょうか。何を考えているというのか。

 だから少し上半身を曲げれば一番見えちゃいけないところが丸見えな予感が――


「わぷっ」


 ぱしゃ、とお湯をかけられた。


「みすぎ」


 顔を上げると笑顔の千愛が俺を睨んでいた。

 見ればこめかみのあたりがひくひくしている。

 やばい。マジで怒る寸前のサインだ。


「そんな目つきで野々花(ののか)を見ていたわけね」

「いや、あの、そんな。プールに行ったのなんて、む、昔の話やん」

「さっきは調子のいいこといってたけど……野々花美人だもんねえ。スタイルいいし」

「あ、あはは! ま、まあまあ。そのほら、違うやん」

「思春期男子的には見るのが礼儀ですよね」


 明るい笑顔で言われてつい頷いた。


「そうそう……って、はっ!?」


 気づいた時にはもう、耳たぶをつねられていた。

 女将さん直伝といわんばかりの威力だった。

 ……結局、せっかく二人で入ったのにえろいこと出来なかったよ。

 残念!


 ◆


 千愛がいいと言うまで脱衣所に入れず、お許しが出た頃にはすっかり洋服を着込まれてました。

 しょんぼりだよ……。


 バスタオルで身体を拭きながらぶつくさ言っていた時だった。


「もう少し見せてくれてもいいと思うんだけど――……あれ?」


 返事がなくて、あわてて千愛を探したらお腹をおさえていた。


「たたた……ううっ。おうっ」

「ち、千愛?」


 ギャグ漫画みたいな悲鳴をこぼしているけど、顔は青ざめて本気でつらそうに歪んでいた。


「……ああもう最悪。ごめん、トイレ」


 いたそうな顔をして小物入れを抱えて、千愛が出て行ってしまった。

 ……真っ先に浮かんだのは、病気とかそういうんじゃなく。

 だからこそ悩みが湧いて出てきた。


 千愛のは重たいんだ。

 婦人科で薬をもらうレベルで。


 だから困った。

 おさまるまでは動けないけど、さあ……どうする?




 つづく。

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