第17話 やっと休める温泉で
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さてどうするか、と思った時だった。
「掃除するんなら、ついでに二人で入って来ちまいな」
「「えっ」」
声を揃えててんぱる俺たち二人を女将さんは意地の悪い笑顔で見つめて言う。
「一日二日でわかる範囲だけどね。亭主が坊主を、あたしはお嬢ちゃんに手伝ってもらった中で少しは信頼してる。だからまあ、若い身空に温泉があるんだから、楽しんでおいで」
信頼と温泉とは、これいかに。
赤面して「いやあの、でででも、そんな急に」ほっぺたを両手で覆う千愛(ちあ)はさておくとして、なんで女将さんの表情は悪そうに見えるのか……あっ。
「汚してもいいけど、その分だけ二人で掃除しろ、と?」
「わかってきたじゃないか。ああ、それと一応念のためいっておくけど。洗えばいいからって、変なことするんじゃないよ」
その変なことって、思春期男子的には一番肝心なところなんじゃないの。
あと、こうも開けっぴろげにOK&NG出されると与えられた枠組みの外に出づらいよな。
何をしても女将さんの手のひらの上感がやばくてさ。
「じゃ、楽しんできな。こちとら時間が空いたら空いたでやることが山積みなんだ」
ほらほらほら、と手を叩かれてあわてて歩き出す俺と千愛でした。
◆
さあ。さあさあさあ!
昨夜やることやっといてこう言うのもなんですが、久々になんの気負いもなくお楽しみの時間がやってきましたよー!
「こ、コウ……あっち向いててよ?」
いやですけど! ばりばり見る気満々ですけど!
だって温泉ですよ、温泉!
どうせ変なことしないならってんで、露天ですよ!
俺はタオルを腰に巻いて湯船で待ち構えているわけですよ、彼女の裸を!
だから磨りガラス越しに更衣室をガン見しながら笑顔で言った。
「はーい!」
返事しただけ。嘘は吐いてない。どやああ!
「……もう、絶対嘘だし。はあ」
磨りガラス越しのため息さえ、今は楽しみを増す要素に過ぎないんです!
からからから……と扉を開いて出てきた千愛は肩口にかかる髪をヘアゴムでうなじあたりでまとめていた。
完全裸かと思いきや、備え付けの厚めの白いバスタオルをしっかりと身体に巻いている。
正直がっかりだよ……みたいな気持ちになるかと思いきや、そうでもない。
「……み、みすぎだから」
肩とか、鎖骨とか。
太ももから指先までとか。
いつだって肌を見せない千愛が、バスタオル一枚という、それはもはや防御力一なのでは? 状態で俺の前に出てきてくれた。
マジで「これはこれでアリでは? アリなのでは?」状態です。
ガン見する俺を何か言いたそうにじっと睨むけど、俺はガン見状態のまま。
やがて諦めたように「はあ」ため息を吐いて、桶で掬ったお湯を身体にかける。
女将さんが選んだであろうバスタオルは男子の夢を裏切るかのように透けたりはせず、けれどぴったりと千愛の身体に張り付いた。
審議……審議中……結論、ありだ。
そればっかりだな、俺。
裾になってる部分がめくれあがりすぎないように気をつけながら、千愛が浴槽に足を付けた。木製の……ヒノキ? すげえいい香りがするからなのか、大きく息を吸いこむ。
するとどうだ。バスタオルだけで隠された形のいい、おっきすぎないけど小さくはないおちちが少し浮いて見えるではないか。
質量のばけものか! いや奇乳とか爆乳とかに言うべき表現だろ。落ち着け。
「気持ちいいね」
「マジで温泉のことしか頭になくなりますよ――」
ね、と言い終わる直前に両目めがけて指がぶすっと。ぶすっと。
「おおおおお!」
「ふん。どこ見てどこおっきくして言ってんの」
本気で呆れた声で言われるけど、両目を手でおさえて身悶える俺はそれどころではありませんでした。
つづく。
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